毎年この時期になると行くことになっている沖縄のがヨセミヤ丸さんの船でのGT釣りツアーであります。
一昨年は新型コロナの影響で中止となってしまいましたが、昨年は秘境までの遠征釣行がなかなか楽しかった。
今年は事前の天気予報が悪く、直前まで中止もあり得るような状況だったのですが、釣行直前に天気予報が変わったことなどもありなんとか行けることになったのであります。
夕方に羽田を飛んで夜8時半頃那覇空港に到着、ヨセミヤ丸さんの車が空港までお迎えに来てくれるのでみんなで乗り込み、コロナ感染者の減らない市中を出歩くのは自粛してスーパーで寂しい夕食を購入後ホテルに入れば、各部屋に散ってモソモソと夕食を食べながらビールなどを飲みさっさと寝る、という段取りになったのでありました。
スーパーで小天丼+うどんというおよそ沖縄っぽくない夕食を買った僕は、ホテルの部屋に入りさあ食べよう、と思ってビールと共に取り出してみたらあれえ?箸がついていない。
他のメンバーの部屋番号もわからないしフロントまで箸を取りに行くのも面倒なので、持って来た歯ブラシとホテルの備え付け歯ブラシの柄を使って箸代わりにして食べる事にしたのだけれど、ただでさえ味気ない惣菜天丼+うどんはさらに味気ないものとなり、ビールでなんとか取り戻そうとするもののなぜかビールの味もろくに感じなくなるほど歯ブラシ箸は強力に僕の味覚を抹殺してくれたのでありました。
これというのもみんな新型コロナのせい!コロナさえなければ外に行って美味しい沖縄そばに生中などで美味しい思いができたのに。
翌朝6時半、ヨセミヤさんがお迎えに来てくれたので一同さっさと荷物を積み込み港へ。
港に着くと真っ黒に日焼けした顔にギョロ目のヨセミヤ5号艇のツグミ船長が笑顔で握手して歓迎してくれた。
この船長、楽しくて好きな船長の一人なのであります。
我ら8名は素早く釣道具に着替えなどの身の回り用品を船に積み込み釣りの支度です。
ここで船に乗ったら最後、このあと三日間は船中泊で船の上での生活になるのであります。
GT相手の釣りなので道具のセッティングができたらリールのドラグの設定を計りを使ってやって貰い、これが終わると出船となります。
曇り空の中船は那覇の港を出てぐんぐんと進み本当は瞬く間にぼんやりと霞んでいくのでありました。
今回のツアーに参加したのは総勢8名。
毎度おなじみジギング王(最近はキャスティングばかりだけれど)にツアー主催のルアーショップエブ&フローのKY店長、昨年ご一緒した若手のKさんにO部長T課長のサラリーマンコンビ、先月サンライズで一緒だったSさん、そして初めてソルトの釣りをするというTさんに僕という構成です。
7時半出船。
港を出て最初のポイントまではしばらく走るので、朝ビール、朝チューハイ、朝ハイボールなど思い思いに朝酒をかっくらいながら海風に打たれていい気分になっておりました。
最初のポイントまでは二時間くらい走ったかな?途中寝ていたのでよくわからないけれど多分そのくらいでしょう。
エンジン音が下がってくれば早くもキャスティングロッドを手にルアーを投げる準備をして船長から合図が出るのを待つのでありました。
空は曇天で海は暗くおよそ沖縄の青い空白い雲というイメージとはかけ離れているものの、こういう天気の方がGT釣りにはむしろ好条件となるので歓迎なのですが、この日は時折雨もぱらついてこれが嫌でした。
最初のポイントに着いて早速釣り開始の一流し目。
なんといきなり部長OさんにGTがヒット。幸先いいじゃあありませんかあ。
数分のファイトの末に上がってきたのは20キロ弱のGTでした。GT的には大物ではないかもしれないけれど朝一でヒットは気持ちもいいし、その後の釣りに余裕ができるというものです。
初めてのGT釣り参加のTさんは初めて見るGTに驚きを隠せない様子、ファイトごへばり気味のO部長の姿を見て、オレ大丈夫かな、と不安そうなのでありました。
なんたってTさんはトラウト釣りでは世界中を駆け回っているらしいもののGTタックルのようなでかいリールに長くて太い竿は初めて。
最初はキャストの仕方もおぼつかないは道具が重くてすぐに息が切れるはと四苦八苦していたご様子なのでしたが、このGTを見て目の色が変わったのを僕は見逃しませんでした。
O部長が使っていたルアーは僕と同じハンマーヘッドのしゃくれというポッパー。
それなら僕にもチャンス有り、と投げ続けていたのですがGTちゃんはしばらく沈黙しポイントを大きく変えていきました。
早くも12時近くなり移動中に弁当を食べて食料補給をしたら次のポイントに到着。
ここでも僕はシャクレを投げていましたが次に来たのはT課長。
トーマスのポッパーにGTが襲いかかった。船首でのさっきのよりでかそうなファイトの様子を聞きながら船尾側で投げ続けてヒットを狙うも連発はせずに終わりました。
T課長の魚はやはO部長のより少し大きく20キロ以上のまあまあサイズでありました。
その間O部長の方はGTを早々にキャッチした余裕でインチクでね魚を釣りまくっていたのですが、ここでアカジンを釣り上げ船長から賞賛を受けてご機嫌なのでありました。
アカジンという魚は沖縄地方のハタ類の中では最も美味しい魚で刺身から火を通した料理まで何をやっても美味しい。
本来なら常連釣り師の根魚王がこの魚を狙いに来ているところなのですが、今回はその抜けた穴をO部長が埋める格好になってくださった。
連れたお垢人は晩餐のツマミにマース煮という沖縄料理で出されることになる。
この後僕はちっとも釣れる気がしなくなって昼寝をしていた。
うとうとしながら夢の中で誰かに出た、という声が聞こえたような気がしたのでノソノソと船室のベッドから這い出して外に出たら、初心者Tさんに出たらしいのだがトラウト釣りのように合わせを入れてしまい魚がバレてしまったようで悔しがっていた。
これは他の釣りを深くやっていればいるほど起こりやすい現象というか、魚がヒットしたら合わせるというのが一般的な釣りの基本なので体に染み付いてしまっているんですね。僕もつい最近まではこの合わせてしまう病にずぶん苦しまされていくつものGTやヒラマサをバラしているのでよく分かる。
Tさんもせっかくのヒットを無にしてしまいちょっとがっかりしていた。
再び船尾でジギング王と並んでキャスティングを始めた僕だが魚が出る様子はこれっぽっちもなくちょっと投げやりになっていた。
そんな気分を吹き飛ばしてくれたのがジギング王。
来た!と声を上げたと思ったら竿が曲がっている。素早くファイトに入り魚をいなして取り込んで来たのはメバチマグロだった。
なあんだメバチマグロかあ、と口では言いながらもジギング王は一本魚を釣ったことで気持ちにゆとりができたご様子。
そうなんです、この釣りは釣れないと気持ちがどんどん追い詰められて行く、一方で釣れたら気持ちに余裕ができるのでいろいろなことも試せるし楽しい釣りが展開できるのであります。
僕も当然そのことは分かっているので早く釣って楽になりたかった。
しかしそんなに簡単に釣れるものではないのがGT釣り。何と言ってもトップ・ウォーターゲームの最高峰なんですから。
さらに一時間が過ぎ3時のおやつの時間になった頃、選手で誰かにまたまたヒットした様子が聞こえて来たので、今がチャンスと僕も連発を狙う。
同時に中乗りのタイソン君が流していた餌の泳がせ釣りにも大物がヒットしたようでT課長が対応させられていた。
同時にGTダブルヒットであります。船上はにわかに興奮の坩堝となり賑やかになる。ファイトの様子は船長自らビデオカメラを手に撮ってくれている。
僕とジギング王は船尾で、こっちにも来いとばかりに投げ続ける。
二匹は無事に上がったルアーで釣ったのは若手のKさん、そしてT課長と二人並んでダブルヒット写真。
餌釣りの方は釣れた数にはカウントされないものの二匹GTが並ぶと迫力がある。
初心者Tさんも4匹目のGTを見て興奮気味。新たな釣りの世界に飛び込んでしまった自身にもコーフンしている様子だった。
そろそろ僕も釣りたいなあ、と焦りも出て来た午後4時過ぎ。夕まずめのいい時間にそろそろ入ろうという時間で低気圧の接近に風もそこそこ強まり初めてGTが出るにはいい条件になっていた。
そろそろくるぞう!となんとなく予感をしながらカーペンターのシーフロッグというポッパーをぽこぽこ音を立てて引いていたらいきなり目の前にドバーン!と水柱があがったと当時に竿を持つ両腕にどかん!というショックが伝わる。
出た〜!ヒット!ヒット!と叫んでファイトに入る。
すると船首の方でもヒットの声がしている。
誰かが掛けたようだった。
ダブルヒットだ。魚の活性は高い。人間の活性も頂点まで上がる。
ファイトを続ける僕の方も久しぶりのGTの縦横な感触が心地よい。
グイグイと竿を引き込みドラグを鳴らして太い糸をリールから出していく。アドレナリンが吹き出してコーフンは絶頂となる。
何度かドラグを出されたものの水深もそれなりにあったので無事にGTをキャッチできた。すぐに針を外して船長はもう1匹のGTを掬いに船首へと向かった。
船首でGTをかけたのは若手Kさん、今日二匹目だ。
巨大なタモに入ったGTは船尾まで水柱を運ばれて船尾で上げられた。
二人並んで写真を撮ろうということになり、ドカット(道具箱)に腰掛けてGTを膝の上まで運んでもらう。
GTが弱らないように海水をくみ上げるホースを口に突っ込み、時折体にも海水をかけてあげるので、それを抱っこする釣り師は自ずとびしょ濡れになる。
びしょ濡れになりながら魚を抱っこして薄ら笑いを浮かべているというのは一般の方から見たら薄気味悪いものなのかもしれないのだけれど、つった本人にとっては人生の中でもかなり大きな比重のかかった喜びの瞬間なのであります。
無事にリリースしたらファイトに疲れた体を休める間も無くキャスティングを始めます。
なんたって今日一番の地合いが来ている、いやこんなに凄いのは数年に一度のチャンスかもしれないのでありました。
すると間も無くジギング王にGTがヒットし僕のすぐ横でファイトを始めました。魚はそこそこ大きいようで時折ドラグを出してタタカッテいたのですが、その邪魔にならないように僕はキャスティングを続けていた。
ジギング王が無事にGTをあげて写真を撮り始めたところでなんと、再び僕にヒット!
さっきのGTよりは少し軽く感じたものの、GTの重厚なファイトは変わらずこちとらも気合が入る、さらに本日二匹目とあっては思わずうるら笑いまで出てしまうというもの。
ジギング王のGTのリリースと僕のファイトを同時にビデオで撮りながら盛り上げる船長に向かって余裕のVサインを出しつつファイトを続けた。
間も無くGTが上がろうという時になって急に手応えが軽くなり糸がスイスイ巻けてしまうので???と思いながら巻くと下半身のないGTが浮かびあ上がってきた。
サメにやられてしまったのだ。あと少しで上がるという時に一撃されたらしい。
上がってGTは無残にも腹から下がなくなっていた。
一応写真だけ撮ったが、サメに食わせてしまったという罪悪感に襲われて一瞬嫌な気分になる。
それでもGTを二匹かけたことを喜ぶようにしようと自分に言い聞かせると気分が楽になった。
海上は風が強まり嵐が近づいていたが、KY店長のもう一流しお願いしますと船長に頼み込んで流し返してみたのだが先程までの狂騒が嘘のように海は沈黙してしまった。
船長が言うにはサメの群れがきてしまいGTも餌を捕食するどころではなくなってしまっているとのことだった。
目の前の海の下で行われている弱肉強亜食の世界を想像させられまたまたコーフンする。
嵐も迫るのでやむなくこの日は釣りをやめて今夜投錨する風裏の場所まで移動する。
お疲れビールを飲みながらこの日一日をそれぞれ心の中で振り返るのでありますが、釣れた組みと釣れなかった組みとでは心中がまるで違う。
喜びに満たされるビールと悔しさだけがしみてくる酒の違いだ。
とりわけ初めて参加のTさんは二度のヒットを合わせのミスでバラしてしまったのだからさぞや悔しかっただろう。
それでもこの釣りは楽しい、機会があったらまた釣れてきてほしいとKY店長に話していた。
彼の長い釣り人生の中でも今日一日の釣りは大きな人生の転換点になったのかもしれない。
人生には大きな人との出会いや人生の転換点になる出来事との出会いが何度かあるのだが、それは後になってみて感じることも多い。
僕にとってはKY店長との出会いが釣り人生の大きな転換点となり人生終盤を幸せにしてくれた大きな出来事だった。
Tさんにとってもそんな出来事の一つがこの日だったのかもしれない、いやまだGTが釣れていないのでそれは彼が1匹目のGTを釣った瞬間なのかもしれない。
いずれにせよ様々な思いが去来していたことには間違い無いだろう。
船が停泊し夕食が用意されると、シャワーを浴びてさっぱりした一同は今日一日を振り返りながら明日への希望を酒の酔いとともに語り合いながら夜はふけて行ったのでありました。
写真協力:Ebb&Flow、ヨセミヤ丸
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