シンデレラ@バレエ・アート神奈川2015
シンデレラ姫の話を知らない方はおじさん方でも少ないと思いますが、今回はシンデレラのバレエ公演のお話です。
「いいオヤジがシンデレラかよ!」ってお思いでしょう。
どこが面白いの?って思われる方も少なからずいらっしゃるでしょう。
これはですねえ、生で見てみないとわからないんですねぇ。
逆に、生で見ちゃったらもうヤバイですよ。一発でトリコになります。
1月18日の午後遅く、ワタクシは神奈川県民ホール、大ホールのロビーで椅子に腰掛け、ロビーを埋め尽くすお客さんたちの客層をぼんやり眺めておりました。
ざっと見て9割が女性、残り1割の男性の中でもワタクシのようなイイおっさんが一人で来ているであろうという方はほとんど見られず、およそ2500人入るホールをほぼ満員にした客の中でおそらくは片手に満たない数なんじゃないか思われました。
それだけ、バレエというのは日本においては女子の世界、お目々の中にお星様がキラキラしているようなヒトたちの世界に限定されてしまっている様子が伺われました。
ワタクシのようなオッサンは自ずと自分の居場所が見当たらなくてちょっと落ち着かない心持ちです。
日頃、ワタクシが出入りするジャズ・クラブあたりの客層とは対極にあるんじゃないでしょうか。
今回のバレエは、日本バレエ協会関東支部神奈川ブロック設立35周年第31回自主公演 バレー・アート・神奈川2015、というとっても長い前置きの公演です。
演目は「シンデレラ」そう!みなさんでも知っている、あのシンデレラ姫のお話。
継母とその二人娘にいじめられていたシンデレラが乞食のお婆さんの魔法でお姫様に変身して王子様をトリコにするも、夜中の12時の時計がなると元の姿に戻ってしまう。片方残されたシンデレラの靴が合う足を持つ女性を王子は探して・・・っていうあれです。
今回も、バレエ・ダンサーの寺田恵さんことめぐちゃんが出演するというので見に行きました。
彼女の今回の役どころは、乞食のお婆さんが精霊に変身して、いや違う、精霊がお婆さんに変身していたんだ・・・が、4人の精霊を呼び出し、それぞれがシンデレラに花、衣装、金らんマントやダイヤのティアラを渡してカボチャの馬車に乗せて送り出す、その精霊の一人である冬の精を演じるのであります。
会場が暗転しいよいよ公演の始まり。意地悪姉妹が登場し喧嘩を始めます。この姉妹の踊りを見て今日は良さそうだぞって思いましたね。演出、振付はコミカルなのだけれど二人の踊りはとてもしなやかで美しい。動きも大きくて躍動している。いぢわる継母は男性が演じていたのだけれど、これもまた良い。
しかし、しばらくしてから本格的に踊るシンデレラはさらに美しかった。
体のしなやかさ、動きのキレが素晴らしい。ジャンプしても着地で足音を立てない。本物だと思いました。
シンデレラ役は樋口ゆりさんというダンサー。
一目でファンになっちゃいましたよ。
すごい人はいるもんだなあって感心しながら見ているうちに、お話はどんどん進んでいぢわるさんたちはお城の舞踏会に出かけてしまい、例の精霊たちの登場シーン。
我らがめぐちゃんの登場です。
春の精霊、夏の精霊、秋の精霊、冬の精霊と順番に精霊の子分を従えて登場し、ひとくだり踊ってからシンデレラに花やらドレスやらを手渡すのですが、めぐちゃんは最後の冬の精霊で登場。
出てきた瞬間舞台がパーッと明るく華やかになる感じがする。頭に巨大ティアラを乗せて登場するその姿は華やかだったなあ。顔小さい、首長いという恵まれた体型からか?この子にはやはり華がある。
踊りもシンデレラに負けず頑張っていましたね。
五人の精霊とその子分に見送られてシンデレラはカボチャの馬車に乗ったところで第一幕は終わり。あっという間に終わった感じ。
あ、そうそう忘れていた。魔法の切れる時間を知らせるシーンで子役が12人登場したんですが、この子たちも鍛えられていて舞台を壊さなかったのは素晴らしい。
休憩を挟んでからの第二幕は王子様とシンデレラが踊ります。
この王子様も良かった、ダイナミック、ジャンプの滞空時間が長い!以前にも書いたけれど、サッカー日本代表に入れてフォワードやらせたらコーナーキックを全部決めてくれそうなくらい空中に浮いている。
やっぱりバレエはこうでなくちゃあ!
同時に良かったのは道化師役。
実はバレエにおいては道化役というのは非常に大事な役目を持っていて、話の進行に大きく関わり出番も多い 、このヒトの踊りがしょぼいと舞台全体がしょぼくなる。
しかし、この道化役は良かった、多分一番空中にいる時間が長かったんじゃないかと思う位よくジャンプしていたし見事でした。
王子様の取り巻きの男子4人組も良かったなあ、個性が引き立っていたし、この辺は演出も素晴らしかった。
このように、二幕まで見たところでもうかなり満足しちゃいましたよ。
音楽は富田実里指揮の 俊友会管弦楽団、曲はプロコフィエフのシンデレラ。
プロコフィエフという作曲家はワタクシの中のクラッシック世界では完全にノーマーク。舞台音楽のヒトくらいの事しか知らず、時代もいつ頃の人なのかも知らないくらいぞんざいな扱いだったのですが、素晴らしいバレエ音楽ですね。
ワタクシの本職、映像制作の世界ですと、作り上げた映像をみながらそれに合わせて音楽を作るんですが、バレエの場合はどうやって作曲するんだろう?って思いましたよ。
だって昔はビデオやフィルムなんていう記録媒体がないわけですから、踊りの振りがあってそこに音楽をつけるのか?それとも物語に合わせて作曲したものに振りを付けていくのか?どちらかだと思うのだけれども(多分後者かな)、実に踊りと音楽が見事に融合している。
映画だったらミュージカル映画のサントラだと思ってください。でも、バレエには台詞やSE(sound effects)がないからその分も全て音楽が役割を担うのですが、それを見事にやってのけている。クラッシックという世界の奥深さを知りましたね。
チャイコフスキーの「くるみ割り人形」なんかは明らかに曲を作ってそこに振りを当てているのがわかるんですよ。曲だけ聴いても結構楽しめちゃいますから。
でも、プロコフィエフは曲だけ聴くのと踊りと一緒に聴くのでは全く印象が違うのではないかと思う。
さて、バレエの方は第三幕に突入、シンデレラの残した靴に合う足の女性を探して世界と駆け回る王子様が最後にシンデレラのおうちにやって来て、偶然にもシンデレラの懐からもう片方の靴がポロリと落ちて、二人は幸せに。というくだりです。
現実的にはリアリティのかけらもないようなお話なんですが、舞台の上ではこのおとぎ話を完璧に構築している。それも多くのダンサーの素晴らしい踊り、音楽、舞台照明、振り付け、演出、全てが融合されて初めて現実を忘れてその中に入り込めるような世界を作ってくれるんです。映画だってそうでしょう?!
それを、生の舞台でやってくれるんですから、いいオヂサンのワタクシも感動で目がウルウル、瞳にお星様がキラキラしちゃいました。
シンデレラと再会した王子様、二人の踊りはこれまた素晴らしいし、それを盛り立てる精霊たち、とりわけめぐちゃんの踊りも素晴らしかった。舞台全体が華やかで、躍動感に満ち溢れていてドラマチックで。
とりわけ感動的だったのがシンデレラの懐から靴がこぼれ落ちた瞬間、驚きに王子様、継母、姉妹一同が氷のようにフリーズしてシンデレラだけ音もなく後ずさりして行くシーン。一瞬の静寂の中に張り詰めた緊張感を微動だにしないダンサーたちと、唯一動く、しかし音もなく静かにそして美しいシンデレラの身のこなしが見事に表現してくれていました。
エンディングは精霊たちに囲まれる中、シンデレラを抱き上げる王子様がポーズを決めた瞬間天からヒラヒラと舞い落ちる銀の紙吹雪にスポットライトでビシッと決まり感動しました。
客席からは拍手喝采。カーテンコールも三回位行われて10分くらい拍手が続いたんじゃなかろうか。素晴らしい舞台でした。
こういう、素晴らしい総合芸術を、言い方は悪いけれど女子供だけに独占させておくのはもったいないですよ。
踊りというと、いかがわしいイメージしか思いおこさないあなた!そう、あなたのことですよ! 一度、遊ぶお金をちょっとためてバレエを見てみてくださいよ。そこには新たな人生の喜びと楽しみが待っていますよ。人生をより豊かに楽しく !
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えのパパさん、初めまして。娘がバレエをめぐちゃんから教えていただいている母です。シンデレラを残念ながら観に行けなかったので、何か記事はないかなー、と思ったら、えのパパさんの日記を見つけました!とっても楽しく読ませていただきました。めぐちゃんの素晴らしかった様子もバッチリわかりました。またぜひ、ご報告よろしくお願いしますねー!本当に、えのパパさんの文章おもしろいです!ツボにはまりました(笑)。ではまたー!
投稿: Nao | 2015年1月24日 (土) 20時02分
Naoさん
コメントありがとうございます。
私のブログはあまりコメントをくださる方が少ないので(^-^;
お褒めのコメントをいただくと俄然やる気が出てきます。\(^o^)/
これからも楽しい記事を書くよう精進してまいりますのでご贔屓に。
バレエ以外のジャズ、釣りなどの記事も、その趣味以外の方にも楽しんで
いただけるよう色々策を練りつつ書いておりますので、おヒマがありましたら
チラ見でも結構ですので、ご覧ください。
ありがとうございました。
投稿: enos | 2015年1月24日 (土) 20時25分