最終章@サンライズ 冬の玄界灘 その10
呼子港に帰る途中、いい場所をみて数回キャスティングで流したものの魚の気配はなく、最後までミヨシでキャストを続けたものの残念ながら大型ヒラマサをキャッチすることなく船は港に戻り、我々は帰りの飛行機の時間を気にしながら、帰り支度を思い思いに始めたのでした。
今回の三日間に渡る釣り遠征を振り返りながら道具を片付けるワタクシの心中は何か重苦しいものに支配されておりました。
釣行前から「とにかくヒラマサが釣りたい」「ブリはもういいからヒラマサを!」と公言していたワタクシなので、型こそ小ぶりだったもののヒラマサを釣ることができ、目的を達成できたのでもっと達成感を味わっていいはずなのですが、なにか納得がいかない気分なのでありました。それは、今回の釣行全体がつまらなかった、もう遠征はいいかな、という気持ちにまでなる程に重苦しいものでした。
原因はわかっていたのです。
七里が瀬を離れる前に「ブリの記念写真を」とデカ鰤を仕留めた3人がトモ(船後部デッキ)で腰掛けて膝の上に獲物を乗せて、一人一人順番に写真を撮る姿を遠巻きに見ていた私は、「あの中に私もいたはずなのに」とビッグ・チャンスをフイにしてしまった自分を責めました。魚をかけておきながら逃してしまった自分の不甲斐なさに、悔しさと怒りにも似た感情が沸き起こっていたのです。
全て自分自身の問題なので他人にどうすることもできません、自分で乗り越えるしかない事なのです。そうと分かっているつもりでいながらも自分の気持ちをコントロールすることができず、己の精神的未熟さに押し潰されていくのでした。
帰り支度は終わり、船長と固い握手を交わした後、「ひょっとするともうここに来ることもないのかもしれない」と漠然と思いながらハイエースに乗って港を去りました。
夕方のヒコーキで福岡空港から羽田に向かう中、おりしもアジアカップのサッカー日本代表の試合が行われていました。
機内WiFiで途中経過を聞き、1対1の引き分けでPK戦に突入したと聞くと、気分はより一層重くなりました。日本が負ける予感がしたのです。
ヒコーキを降りる頃にはPK戦で本田と香川が外して負けたことを知りました。
悪い予感が当たり気分はさらに落ち込んでいきます。
せっかくの楽しい釣行の後なのに、この気分は一体なんなんだ!と自分を責めるもののなかなか現実を受け止めきれない私がそこにいました。
羽田からY店長の車で自宅へ向かう中、TVのスポーツ番組で先ほどのサッカーの詳報を見ようとスイッチを入れるとニュース番組は間も無くスポーツ・コーナーが始まり試合の詳細を伝えました。最後に選手インタビューは流され、PKを外した本田選手が映し出されました。インタビュアーが試合結果についてどう思うか、という厳しい質問をしたのに答え、本田選手は「全て自分の責任ですから」と毅然と答えていました。
本田選手のその言葉に私の心は動きました。
「そうなんだよ、全て自分のせいじゃないか!」背負っているものの大きさは全く異なるものの、本田選手の一言で私は自分を受け止めることができたような気がしました。
自宅まで送ってくださったY店長にお礼を言いひとりになった時、気持ちはすこし切り替わり楽になっていました。
遠征での楽しかった思い出が次々と思い起こされ、再びサンライズ号にそしてみんなとの遠征に行きたいという気持ちが少し湧いてきました。
翌日は、私の通うスイミング・レッスンの新年会があり、私は幹事を任されていました。
平均年齢はおそらく70歳近いであろう人生の先輩たちと過ごす時間は、自分が最年長だった今回の釣り遠征と立場こそ違えど、同じ水泳仲間、趣味の仲間として楽しい時間を過ごすことができました。
お酒が入り、ちょっといい気分になってからの一人一人の挨拶はそれぞれに人生の苦難と希望を語ってくださるありがたいものが多く、「人生、楽あり苦あり、でも前向きに楽しく」と励まされました。
宴会の後、ワタクシは確信しました。これからも釣りを続けていこう。遠征をしよう。どんな失敗をしてもヘコタレるのはやめよう。前向きに楽しんでいこうと。
そう! 2月はインドネシアのコモド島へGTを釣りに行くのが決まっているじゃあないか!シノコノ言っている暇はないじゃあないか!
帰り道、バスから降りた私の目に飛び込んだのは青く澄み渡る冬晴れの青空でした。
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