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2016年4月 3日 (日)

レスター・ヤングはサックスの神様なのだ

タイトルから見ると古臭いジャズのおっさんが書いてる記事と勘違いされそうなので先に言っちゃいますけど、私自身はコルトレーン命の人(やっぱり古いか)なのであります。

今時レスター・ヤングといっても知らないジャズファンの方や名前は知ってるけど聞いたことはない、というジャズファンの方も多いのではないかと思います。

お蕎麦屋さんや焼き鳥屋さんでもモダンジャズが流れている昨今ですから、その辺からジャズの世界に入った方々にとっては遠いスウィング時代の古臭いサックス吹き、というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

最近、このレスター・ヤングの晩年のアルバム7枚をコンピレーションにした廉価CDを見つけて購入し、私自身も久しぶりにレスター・ヤングを聴いたのですが、その音楽の素晴らしさを再発見し、ブログに書いてみようと思ったわけであります。

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1909年生まれで1959年没、というのでわずか50歳でこの世を去ってしまったレスター・ヤングは当時のジャズマンらしくクスリに溺れて早死にしてしまったわけですが、アルトではありますが同じサックス吹きでやはりクスリで早死にしてしまったチャーリー・パーカーの36歳に比べたらまだ長生きをしていますね。

演奏の方もチャーリー・パーカーほどは晩年は演奏がボロボロになっておらず、本コンピレーションアルバムにおいても最後の二枚を除いては素晴らしい演奏を聴かせてくれます。

レスター・ヤングを聴いたことのない方にはその演奏スタイルは、「どうせ古臭いんだろ」というくらいにしか思われていないかもしれませんが、もしそうだとしたらそれは大きな間違いですね。
レスター・ヤングがジャズ界で注目されたのが1930年代のカウント・ベイシー楽団だったことから「スウィング・ジャズの人」、というイメージがあるかもしれませんが、当時としては革命的な新しいサウンドを出していたのではないかと思われます。
そのスタイルの特徴的なところはコード進行の中で使えるあらゆる音を縦横無尽に使いつつもとてもメロディアス、というよりもとの曲よりもいいメロディーを吹いてしまうこともしばしばあるほど。

音の使い方はいわゆるスウィング・ジャズのヒトに比べてとても斬新なので、今聞いても古臭さを全く感じませんね。

分かりやすく言うと現在ではスコット・ハミルトンあたりのプレイスタイルがレスター・ヤングの真似と言ったら分かりやすいかな。
じゃあ、録音のいいスコット・ハミルトンを聴けばいいじゃないか、という声も聞こえてきそうですが、残念ながらスコット・ハミルトンはレスター・ヤングがやり尽くしてしまったスタイルを継承しているだけなので、音使いの新鮮さクリエイティビティが勝負にならないというのが私の個人的見解です。
というくらいレスターのアドリブのメロディ、そしてそのメロディに合わせたサックスの音色の使い分けが素晴らしい。

スウィング時代のアドリブのノリは4ビートにそのまま乗っかって吹きまくるスタイルが多かったなかで、ビート感を乗り越えてもう少し斬新な解釈をしたのもこの人のアドリブで、これはのちのチャーリー・パーカーにもかなりの影響を与えていると思われます。
彼のスタイルをモダン・ジャズで発展させたのはスタン・ゲッツが一番近いのではないかなというのも私の個人的見解ですが、ゲッツの音色、アドリブのフレーズ、音の使い方には随所にその影響がみられます。

レスター・ヤングを見いてみてください。気がついたらあなたは一緒になってメロディを口ずさんでいる、あるいは鼻歌を歌いだしたくなる。そのくらい良いメロディが次々と飛び出しこ気味良い音楽なのですよ。

ここからはちょっと理屈っぽい話になりますが、
ジャズにおけるアドリブというのは、フリー・ジャズを除いてはコード進行に合わせて使える音の中から本来のテーマメロディとは別のそれぞれの曲に対するメロディーを組み立てていくとうことと定義するならば、モダンジャズ以降のアドリブは全体のメロディ重視からメロディを組み立てるパーツであるフレーズ重視に変わっていったように思えます。
フレーズというのはメロディの中の断片のようなものですが、ビ・バップの革命で16分音符の早弾き演奏が流行って、早吹きフレーズが多用される様になったら、アドリブの構成が曲全体から見たメロディの構築よりも、あるコード進行にはこのフレーズが使えるという様にフレーズ単位、フレーズの組み合わせで全体のメロディを構築するという図式化、形式化現象が起こりました。
あるコード進行に対するフレーズのパターンには限界があるので、ハード・バップも1950年代末期になると似たようなアドリブばかりの演奏になり、一部の優れたテクニシャンを除いてはみんな似た様な演奏になってしまった感があります。

この閉塞感を打ち破り新しいサウンドを作り上げて行ったのが一つはコード進行を使わないモードという手法、もう一つはコード進行を無視してメロディを作るフリー・ジャズにそしてモンクやコルトレーンの様に一つのメロディを違うコード進行に分析するなどという手法などがあるわけですが、これらを総合的に理論化したのが現代ジャズのアドリブ理論やサウンドの構築方法になっているのだと思います。

話はさらに逸れますが、フリージャスはメロディを無視している十考えの方、それは間違いです。無視したのはあくまでもコード進行やリズムという決まりごとなので、最後に残ったのはメロディなんですね。
したがって自分の中に自分自身のメロディが無いと、フリー・ジャズで音を出すことはでき無いのです。

もちろん、フリー・ジャズの中にもフレーズ単位でサウンドを作る人はいますけれど、そういうのは大体つまら無いのですぐに消えていっていますね。

キース・ジャレットなどは美しくやさしいメロディと凶暴なフリー・ジャズ的メロディを兼ね備えたミュージシャンですが、現在活躍しているトップクラスの方々はみなさんこのようなところが共通しているようにも思えます。
というか、今の若いミュージシャンなどはこれらを全部吸収した上に立って、新しいサウンドを作り出しているんじゃ無いかと感じるところがありますね。

話をアドリブの話に戻しましょう。
なぜこんな理屈っぽいことを書く中というと、アドリブの核にあるのはどの時代もメロディだということを見直しておきたかっったからで、新しいメロディー=新しいスタイルのアドリブを目指してミュージシャンは日々身を削る努力をしていると思うわけなのでありますね。
早い話、音楽はどんなに複雑でも単純でもメロディーが命であるということを再確認してみたわけですが、そんな気持ちにさせられたのがレスター・ヤングの演奏だったわけであります。


話をレスター・ヤングに戻しますが、むか〜し、1970年代の半ばにはラジオのジャズ番組がたくさんあって、その中でもTBSラジオで夜の10時頃に大橋巨泉さんのやっていた15分番組「巨泉アフター・アワーズ」という番組をジャズファンになりたての私は毎日聴いていて、ずいぶん勉強させられました。
番組冒頭のテーマは毎日巨泉さん自身がブルースをスキャットでワン・コーラス歌って始まり、番組内ではスタジオに持ち込んだ巨泉さんが時々弾いて有名アドリブの解説などするというなかなか他にはない、雰囲気だけで音楽的知識の全く無いジャズ評論家が出てきて薀蓄や歴史を語りレコードをかけるだけのジャズ番組とは一線を画していました。
レスター・ヤングを初めて聞いたのもこの番組で、なんたって巨泉さんはレスター・ヤングの大ファンで、自分の担当だったイレブンPMという深夜テレビ番組でもサラブレッズというレスター・ヤングスタイルのサックス吹き杉原淳さんのいたバンドを出演させて、番組最後では生で一曲演奏して終わるという洒落たことをしていたんですね。

この巨泉さんの言葉で「コルトレーン以降のジャズは、ジャズがメロディーを捨てて練習のようなフレーズの組み合わせになってしまったのに自分はついていけないのでジャズ評論家としての資格はないと自ら判断してジャズ評論をやめた」とおっしゃっていたのを覚えています。

当時の僕はコルトレーン信望者だったので、「コルトレーンだって自分のメロディを持ってるじゃん!それが理解できないなら確かに評論家としては失格だ」などと生意気なことを思ったのですが、確かに後半部分のところは納得させられるところであり、下手くそながら自分でもサックスを身としては常に肝に銘じながら演奏しようと心がけるのであります。

モダン・ジャズ以降のジャズしか聞いたことのないジャズファンの皆様、特にサックスを吹くアマチュアジャズミュージシャンの皆さんには是非レスター・ヤングを御一聴をお勧めしますよ。

アドリブをどうやって吹いていいのかわから無い人、フレーズの積み重ねでしかアドリブを組み立てられ無い人などには特にお勧めします。
モダン・ジャズの中にもレスターの影響が随所に見受けられることがわかり、今まで聴いてジャズの聴こえ方が変わってくるに違いありません。
アドリブを構築する際の大きなヒントがたくさんあるので必聴だと思います。

とりあえず、このコンピレーションアルバムなんかコスパが高いのでお勧めです。

一枚だけというなら、Keynoteレーベルへの吹き込みの一連の頃がレスター・ヤングの黄金期なのではないかと思われます。どちらも値段はあまり変わりませんが。ご参考になれ間幸いであります。


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コメント

音楽でジャズなど聞きませんが、なんか映画の世界のような異次元空間でありカッコイイ音楽ですね。粋な感じです!
レスターヤングなどまったく知りませんでしたのでYouTueで何曲か聞いてみましたー。正直他のサックス演奏を聞いたことないのでよくわかりませんが、素敵な音楽でした。えのさんブログタメになります!
コーヒー、そば、ジャズ、釣り。
人生楽しみたいですねー!そんな人生を送られているえのさん羨ましい限りです

未来さん

いつもコメントありがとうございます。

昨晩遅く、与那国島の遠征から帰ってきました。まだ眠い!笑

ジャズネタも読んでいただけたんですね。
しかも、レスター・ヤングを聞いてみていただけるなんて嬉しいです。

自分の知らなかった世界が広がるというのは楽しいですよね。
自分のまだ知らない、楽しいことや素敵なことってたくさんあると思うんです。

僕は好奇心こそが自分の世界を広げ、人生を豊かにしてくれる
と常日頃から思っているので、他人が面白そうにしているものには
とりあえず一度手を出してみる。ということをしてきました。

気がついてみたら趣味がどんどん増えて毎日が楽しい生活になっていましたよ。

お金も体力もなくても好奇心を満たす方法は色々あるので、この気持ちだけは
歳を取っても失わないようにと心がけています。

未来さんも是非人生をエンジョイしてくださいね。

与那国遠征シリーズも今日から随時更新していきますのでお楽しみに。

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