いきなりGT!! 沖縄離島遠征2016 その二@第5寄宮丸
2016年の沖縄離島船中泊遠征。
伊江島近くのポイントに入った第5寄宮丸はわずか二流し目の第一投でGTがヒット!
つぐみ船長の「キタ!キタ!キタ〜ッ!」という叫び声が沖縄の海に吸い込まれていく。
ミヨシを見ると、すでに全身で魚の走りに耐えるハット君のファイティング姿勢が見える。見た瞬間「これはデカイ!」と誰もが思ったに違いない竿のしなり、糸の出され方。
他の釣り師一同は素早く自分の竿を上げて船は魚の走る方向に動きアシストに入る。
推進は約30メートル、大型GTならばあっという間に潜ってしまう深さなので、まずはこれを避けるために船を水深の深い方向にうまく動かして魚をそちらに誘導する。
最初の厳しい走りをなんとか耐えしのぎ、船も水深のあるところまで移動することができた。ここからは力と忍耐力の勝負。
かかったGTの力はなかなか弱ることなく、通常ならある程度走りに耐えればその後は重さに耐えて巻くだけなのであるが、相変わらずドラグを鳴らして糸を引き出す。
走る方向も右へ左へと衰えることを知らない。
いったいどんな大物が今水中でハット君を翻弄しているのか。
早くその姿を見てみたいという期待に一同はミヨシに集まり格闘を見守る。
右舷に回り込み魚の動きが止まったかに見え、これでもう大丈夫か?と思えた瞬間!
あ!という小さな悲鳴のような声とともに糸の緊張が解けてしまった。
糸が切れたか?!と思ったがどうやらルアーは付いているようで、魚が針から外れてしまったらしい。
通常魚が外れる時というのは、糸がなんらかの原因でたるんだ瞬間に針にかかっているテンションが瞬間的に弱まり魚の口から外れるものなのですが、今回は糸はピンと張ったままで突然外れてしまった。
瞬間的に全身の筋肉の力を出し切って格闘していたハット君は、突然の戦いの幕切れが信じられない様子。周りで見ていた我々もどうして外れたのか理解ができないでいたのだが、魚釣りというのは常にこういう理不尽さも含めた現実の連続であり、釣り師は常に不運、幸運、理不尽という現実に向き合っていくしか無いのであります。
数分間の格闘ですっかり憔悴しきった様子のハット君を見て、もしも私にこんな魚が掛かったらいったいどうなるのだろう、と不安になるのでありました。
突然の戦闘開始にフル・アタックし、数分間筋肉を100パーセント使い切る戦いをするというのは想像以上に大変なことで、ボクシングにしろ総合格闘技にしろ多くの格闘技の多くは一ラウンドが3分ということからも、連続して筋力の緊張を維持し続けるというのはヒトの運動能力の限界に挑戦するような事なのではないかと感じるのです。
釣りはスポーツでは無い!という意見をよく耳にしますが、誰の支えも借りる事はできず、竿は自らの手で握りしめる事しか許されず、竿を船べりに固定する事はもちろん、体を椅子に固定する事すら許されないこの釣りのなんとストイックな事。これをスポーツと言わずしてなんと例えたら良いのでしょうか。
魚釣りというのはとても多様なもので、一言で全てをくくる事は不可能な事で、対象魚の大きさだけの問題だけでなく、同じ魚でも釣り方によって様々に細分化されていくのであります。
それぞれに、その釣り上げるまでのプロセスに快楽的な楽しみが潜んでいるために、それぞれの釣り方が様々な釣り師によって支持され楽しまれているのではないかと思うのであります。
これは、ある意味「世界中の異なる文化」と同じようなもので、個々の文化に良し悪しはなく、そこにあるのは多様性であり、それぞれが素晴らしい個性を持つという事を認め合う事で初めて世界が成り立つのではないかと。
少々話を大きく広げすぎてしまったかなあ、などと感じながらも想うのでありました。
さて、そんな理屈なんか想っている暇はないんです。
海の上に出たら釣り師は釣りをする以外する事はないのですから、他人が魚をバラした余韻に浸っている場合じゃあない。次は俺だ!と誰もが思うんです。
その証拠に次の流しからキャスティングをしている方々の目つきが危なくなっている。
投げる竿を握る力の入り方も自ずと変わってくるというものです。
船は同じポイント周辺を丁寧に流し直し、釣り師はあるものは水面を逃げる魚を、あるものは水面で騒ぐ魚を、あるものは水中を逃げ惑う魚を、それぞれ演出しつつGTがそれに食らいつく瞬間をイメージしながら釣り続けたのでありますが、そのご爆発する事はなく一時間あまりの時間が過ぎたのでありました。
釣り師一同、思い思いに弁当食べたりしている中、何か不満そうな話ぶりをしている方がいたので聞いてみると、移動中の会話の中で犬好きである事からニックネームがツミビトからポメリンに変更された大阪S氏が弁当のご飯にかかっているゴマの量が昨年より少なくなっていると不満を漏らしている、さらにはフリー・ドリンクの中に今年はマンゴー・プリンが入っていないとかで、これはサービスの著しい低下であると氏は訴えるのでありました。
予想外のセコイく執拗なポメリンの指摘に当惑するクルーのユーキ君の様子を他のイヂワル釣り師一同は楽しみながらも、沖縄海上の昼下がりは釣りへのテンションが下がり気味になっていったのでありました。
そんな中で、会話のやりとりにニヤニヤしながらもジグをシャクってニジョウサバというあまり聞きなれない魚を釣り上げたのがヨッシーさん。
ジグを見たら「つちのこ」こと、ゴビアス・アンセスターがついている。
この方、大魚専門かと思いきやどうやら根魚を狙っていた様子で、こういう技もなかなか鋭い。
少しして、 GTとの戦いの疲労からやや回復したハット君が出していた竿が曲がる。
きたーっ!とテンションが上がるかと思いきや、今度の魚は引く気配すら見せず嫌な予感。
上がってきたのは朝一と同じヤガラちゃん。
この一匹で潮止まりと判断したのか、船は大きく移動することになりました。
一時間ほど走る、というので私はキャビンのベッドに横たわり目を閉じました。
エンジン音と波の音が次第に意識から薄れていくのを感じながら眠りについてしまったのでした。
写真提供 : プロショップ Ebb&Flow
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最近忙しく見れてませんでしたがサンライズから一気に読まさせてもらいました。
サイズ釣行でのクエ!ボトムでドン!
羨ましい限りです!
山口県でも日本海側ならたまに釣れたりするみたいですがまだ釣ったことないです!
そして遠征の連続!gtは正直食べれないのであまり釣りにはいきたくないかもしれません。しかし人を虜にする魅力もあるんでしょう!コーヒーは同居人から荷物をこれ以上増やすなとのお達しがありましたので忘れた頃にひそかに買ってやろうと思ってます(笑)
投稿: 未来 | 2016年6月 8日 (水) 10時46分
未来さん
コメントありがとうございます、お久しぶりですね。
忙しかったのですね。こちらは遊んでばかりで申し訳ございません。笑
クエは全く狙っていなかたので、釣れてびっくり!
こんなこともあるのか!という感じでしたねえ。
でも、次からは狙っちゃうかも。
GTは僕自身はそんなに憧れとかこだわりを持っていなくて
たまたま遠征のターゲットとしているので釣る、という感じなんです。
だから、釣れちゃうと同行のGT命みたいな人たちに申し訳なくて。笑
この二回の遠征は連続して信じられないことが起こってしまい
本当に驚いています。
自然相手の遊びというのはこういうこともあるからやめられませんね。
その点コーヒーは逃げませんので、未来さんも環境の整った所で
試してみてください。
いつも本ブログを読んでいただきありがとうございます。
投稿: enos | 2016年6月 8日 (水) 13時18分