コルトレーン ペンシルバニア州立大 ライブ
もう数日過ぎてしまったけれど7月17日はテナー・サックス奏者コルトレーンの命日だった。今年は49回目の命日。来年はちょうど50回忌になる。
亡くなってもう50年というのだから半世紀も前の人なのに、音楽的には、というよりジャズのサックス的には未だにこの人の影響がとても大きくて、数年前に若くして亡くなってしまったやはりサックスの名手だったマイケル・ブレッカーなどを始め現在の一線のサックス奏者のスタイルにまだまだ色濃く影響を与えているところがすごい。
私自身もサックスを吹来始めたのはコルトレーンを聴いて吹きたくなったのが18歳の時。そして数年前にはやはりコルトレーンに憧れてず〜っと欲しかったソプラノサックスも手に入れて吹き始めたと言うこともあり、この方への思い入れは人一倍強いのだ。
そんなコルトレーンの未発表ライブ録音がアナログ盤で発売されるというのをこの4月に聞いて早速予約したのが一周間前に突然送られてきたのを放置してあったので、49回忌に当たる7月17日に聴いてみた。
せっかくなので、暑いけれど窓を閉めてデカイ音で着ちゃおうと気合を入れてオーディオ装置に電気を入れてさあてと箱を開けてみた。
すると、箱を開けてびっくり! なんとこのレコード、ジャケットがない!
厚手のビニールにシールが貼ってあって、その中にむき出しのレコードが入っているだけ。
さらに、レコードの真ん中のところのラベルもない。
さらに、さらに、レコード盤が白地に赤を放射線状に吹きつけたような昔のピクチャー・レコードというようなやつ。通常はミュージシャンの写真をプリントしたりするのだが色だけ、というシロモノ。
なんだかブートレグ(海賊盤)の雰囲気がプンプンするのだが、唯一の情報源であるビニールに貼られたシールに書かれた内容を見ると
JHON COLTRANE QUARTET
Live at the Pennsylvania state University,January 19th 1963
SIDE A 1.BYE BYE BLACKBIRD
SIDEB 1.EVERY TIME WE SAY GOODBYE
2.MR.P.C
3.MY FAVORITE THINGS
YOUR COPY 151/300. MADE IN THE EU. SUITABLE 1347
と書かれている。
コピー・ナンバーが300枚中の151番目らしい。
ちょうど真ん中を折り返したところの一枚。なんだかどうでもいいことなんだけれど嬉しくなる。
真ん中のラベルのところまでレコードの溝が刻まれているということは録音時間も長いということなので、片面20分強というLPレコードの収録時間からすると30分くらいは入っているのか?
いったいどんな音が出てくるのだろうか?と早速ターンテーブルに乗せてかけてみた。
録音は高音が潰れた帯域の狭いものであまり良くないが、楽器の音はよく捉えられていて本家インパルス・レコードの録音よりもベースの音などはっきり、しっかり聞こえる。
さて肝心の演奏の方なのだけれど、一曲目がBye Bye Blackbirdというのにちょっと驚いた。
と言うのは、この曲、1957年のマイルス盤「Round Midnight」でコルトレーンが演奏していた曲なのだけれども、コルトレーンが自分のクゥアルテットで演奏したものを聴くのは初めてだったからであります。
というよりも、1963年のコルトレーンというと、他のライブ資料など見ても自分のオリジナル曲のモードものを中心に演奏していて、これに時折バラード曲のスタンダードが入るくらいで、ミディアムテンポのスタンダードをこの時期に演奏しているのは珍しい。しかも、片面およそ30分の長時間演奏!
いったいどういうアドリブを取るのだろうか、まさかマイルスの時みたいなソロは取らないよなあ、取るわけないと期待満々で聴いていくと、やはり神様コルトレーン。
すごいソロを展開していく。
通常のコード進行の中に独自の代理コード進行をちりばめながらそれもものすごいテクニックで音を紡いでゆくのは圧巻。
この年のコルトレーン作品は「バラッド」「ジョニー・ハートマンとコルトレーン」などバラッドものが多く、一般的にはコルトレーン不調の年みたいな言われ方を昔は言われていたけれど、そんなことない。
B面の三曲もアトランティック時代の曲ですが、こちらは他でもなんどもライブ演奏などされているお馴染みの曲。
これらの曲もすごい演奏なのだけれど、曲の途中でフェード・アウトしてしまっているところが残念。
多分一曲全部入れると表裏で二曲のレコードになっちゃう、というような都合でもあったのでしょう。コルトレーンのソロ部分は堪能できるものの記録的にはちゃんと全部入れて残していただきたかったなあ。
二枚組になっちゃてもいいから。
というレコードなのですが、これらのサウンドはアトランティック時代に複雑にコードを展開していき開花したコルトレーン・サウンドをさらに進化させているのが良くわかる。
後付けだから言えることなのだけれど、この後のコルトレーンがコード進行に束縛されないスタイルの音楽、モードやフリーに進んで行く一過程であるのが良くわかる貴重な演奏です。
もちろん、そういう理屈を飛び越えて聴いていて聴きごたえのある感動的な演奏なので、久しぶりにじっくり聴くコルトレーンに昔の感動も蘇り、自分のジャズの礎はここにあるんだなあと再確認。
加えて、今自分の演奏しているジャズも、技術的には到底かなわないけれど、せめて雰囲気だけでもこういうサウンドを目指したいものだとあらためて思うのでありました。
来年の50周年までに、少しはコルトレーンに近づくことができるのだろうか。
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