バラハタの中華蒸し@華珍楼
皆さんバラハタという名前のお魚、どこかで聞き覚えがありませんでしょうか?
先月だったかこの魚が築地市場で売られていたとマスコミで報道されて少々話題になったお魚ちゃんであります。
忘れてしまったという方になぜ騒ぎになったかと申しますと、このバラハタちゃんエサになる子魚が食べるサンゴから起因する「シガテラ」という毒を持っていることがあり、これを人が食し毒にあたると神経が過敏になり、指先などがちょっとものに触れただけでひどい刺激を感じるようになってしまうというちょっと怖いものなのですね。
ただし全てのバラハタがこの「シガテラ」毒を持っているわけでは無いので、沖縄などでは普通に市場で売られていたりするのですが、毒の有無の見分けが難しいので私自身はどんなに美味しくても手を出さないことにしているのであります。
しかし、今回はこのバラハタちゃんを高級中華蒸しに料理していただこうというお話。
なぜ食べるのかというと、お料理方法で毒を制するというものではありません。今回私の手に入れたバラハタは種子島のものだからなのであります。
種子島にはシガテラ毒の元となるサンゴが生息してい無いため、ここの海域のバラハタは毒がなく、種子島では普通に皆さん食べているし今回我々の釣り仲間が釣ったものを夕食のおかずに煮付けにして出していただいたものもたいそう美味しく、煮汁をご飯にかけてペロリと食べてしまうものでした。
実は私自身すでに昨年この島で釣ったバラハタを四匹ほど持ち帰り美味しく食しているのであります。
そんなわけで今回の種子島釣行ではバラハタをお土産の重要なターゲットと位置付けて釣りをしたのでありますが、昨年は釣れるとバラハタだったのが今年はなぜかアカハタばかりが釣れてくる。
アカハタも十分美味しいお魚でありますが、大型の肉厚バラハタの方が身がしまってより美味しいのではないかという思いがあり、一生懸命狙ったもののとうとう一匹しか釣れずに釣行を終えてしまったのであります。
釣り的には食べられ無いながらも自己記録となる大型イソマグロを釣り上げたので満足したもののお腹の方が少々寂しがっていた。
そんな私の意地汚い姿を見た昆虫大好きさんが自分の釣ったバラハタを下さるという。
それもなかなかいいサイズのバラハタで二人ではとても食べきれ無いような見事な大きさのものを下さるというので、お礼を言ってありがたく頂戴して帰ったという次第。
昆虫大好きさんには今年二月にも良型のキジハタをいただき、それを中華蒸し料理にして食べたところたいそう美味しかったので本ブログに記したので覚えのある方もいらっしゃる方もいらっしゃるかと思いますが、今回もまたお世話になってしまった。
実は昆虫大好きさん、今回自分のお土産用にハタ類を狙っていたのですが、最終日に大きなスジアラ(アカジン)という超高級ハタを釣り上げたので、バラハタが格下に見えてしまったご様子。
おかげで今回もまた近所の中華料理屋さん華珍楼にお願いして宴会を行うことになったというわけです。
さて、宴会当日の昼下がり、例によって華珍楼さんに魚を持ち込みシェフと料理の をした。持ち込んだハタは前回と同じ四匹ですが今回はサイズが全く違う。
昆虫大好きさんにいただいた大きなバラハタを清蒸という蒸し物にしていただくことにし、二匹のアカハタは一口大に切って中華で使う麹のようなもので下味をつけててんぷらのようにコロモをつけて揚げるという。さらにもう一匹のバラハタは丸揚げにして前回とはまた違った少し辛めのタレをかけてくれるということで打ち合わせは終了。
もうこの時点で出来上がった料理を想像してよだれが口の中にあふれていた。
さて、夕方七時、待ち合わせの時間に少し早くお店に行ってみるとまだ誰も来てい無い。
今回の宴会メンバーはレギュラーのKさん一家に保育園園長二人、そこに前回のクエ鍋の時に登場した絵描きのおっさん、じゃなかった画伯二人とこれまた前々から声をかけていたにもかかわらず、タイミングが合わ無いのか嫌われているのか参加できなかった保育士さん二名、あ、そうではない内一名は出世して今年から園長さんをなさっているのだった。
ともかくも我が子の保育園関係者と私の十名が来ることになっていた。
誰も来無いので、厨房を覗いたらおお!すでにフリッターの様に揚げられた魚がお皿に盛り付けられているではないか。そしてその奥にはこれから蒸されようという大型バラハタが大きなお皿に横たわりすでにネギやら生姜やらの千切りが身の上に覆いかぶされている。
みんな早くこ無いと食べちゃうぞう、と思っているところに二名が登場し、古園長からは少し遅れるとの電話。
とりあえず前菜で私のさばいたカンパチのお刺身を食べていましょうということになり、これまた他力本願で釣行でロケット大好きさんが釣り上げた12キロの大物なのですが、さばいてみたら脂ののりが素晴らしく、ちょいとつまんでみたら甘みが口に広がりたまらなく美味しいので、大きな身の四分の一ほどをお刺身にして持ち込んだというもの。
刺身が出る頃にはさらに数人来たので、ビールなどで乾杯して早速いただく。
一同から当然のごとく「美味しい!」の連発。
正直言っていただいた時は余りに大きなカンパチなので味の方はどうなのかしらん、と思っていたのですが私が悪うございました。土げさしても足ら無いほどに美味しい。
身の脂の乗り方が見事でまるでマグロの大トロのように白い脂分が身の中いっぱいに広がっており、口に入れるととろける口当たりに広がる甘み、ああ、これがカンパチというお魚の実力だったのね。と、これまでにも幾度となく美味しいカンパチをいただいていたけれど今回のものはさらに特別なうまさなのでありました。
後から遅れてくる人のことなんか考え無いでガンガン食べて!という私に一同遠慮なくパクつくのでありますが大皿いっぱいのお刺身はそう簡単にはなくならない。
そうこうしている内にメンバーが揃って再度乾杯したところに、先ほど厨房で見たフリッターが出てきた。
3センチほどの大きさの少し厚めのコロモの付いた揚げ物なのでありますが、早速いただいてみると、これがまた素晴らしい。揚げたてではなく時間は経っているにもかかわらずコロモはカリッと軽やかな歯ごたえでその中からムチッとした舌触りに白身の魚の甘みが口いっぱいに広がる、さらに噛み砕いて飲み込んだ後に後を追うようになんとも言えない不思議な旨味が口に広がるという魔法のようなお料理。
これを口にした瞬間から先ほどまで主役だったカンパチには誰も見向きもしなくなり、切り身が少し残っているのにフリッターに集中攻撃をかけている。
例の中華的麹の下味がこの味の秘密なのだなと思いながら感動して食べたのでありますが、さらに次に出てきたハタの丸揚げ中華あんかけがすごい。
高菜を使ったあんかけ
丸揚げしたハタに高菜を使ったトロミのあんかけがかかっているのでありますが、高菜のこういう使い方を見るのは初めて。
早速お店のママに分けていただいて食べることにした。
すると、一同口々に「美味しい!」の連発、さらには「初めて食べる味」「不思議な味」という言葉が飛び交う。
またまた、先ほどまで主役だったはずのフリッターに誰も興味を示さなくなりいくつか食べ残されている始末。
いったいこの集団の方々の食い意地ときたらどこまではっているんだろうか。
いや、人というのは本来このように著しく欲望の強い生き物で、美味しいものにはより美味しく、心地よいものにはより心地よくと飽くなき探求を続ける生き物なのでありましょう。
それにしても、出てくるお料理がどんどん美味しくなるというのも素晴らしい、この店のシェフのマジックとも言っていいくらいの腕前に感心しつつ、この後の清蒸に期待する。
食い意地集団によって高菜のハタはあっという間に骨までしゃぶられ尽くされてしまい、いよいよ蒸し物、清蒸の登場です。
大きなさらに乗ったその姿が円卓に置かれた時、一同余りの大きさに驚く。
おそらくこのように大きなハタを見たのは前回のクエ鍋参加者以外は初めてのはず。
クエ鍋の時はすでにバラバラに分解解体されてしまった姿しか見ていなかったので、丸ごとの姿としては私を除く全員が初めてか。
蒸されたハタの上にはネギやしょうがなどの千切りがたっぷり乗せられているところまでは2月にいただいたキジハタと同じなのですが、今回はこの上に香菜・コリアンダー、あるいはパクチーがたっぷり乗せられていた。
見ているだけでよだれがどんどん出てきてもうたまらない。
圧倒される魚の大きさに一同が声を上げている間にママさんがまたまた食べやすく身をほぐしてくださり食すことに。
一口食べて前回同様またまたムムム!と声が出なくなる。
美味しすぎて何も言えなくなるのだ。先ほどまでグルメを気取りうんちくを述べていた画伯も黙ってしまった。
魚の旨味に加えてこの独特のタレが素晴らしいコクを生み出してくれる。
それは甘いようで少し辛いようでいながら口の中いっぱいに魚の旨味が広がり何も言えなくなってしまうのだ。
みんな気がつくと躊躇うことなく骨や頭を皿にとってちゅうちゅうとしゃぶっている。旨いのだ。
例によってご飯を注文して取り分けると早速その身から染み出した旨味たっぷりのタレをかけてご飯を頂く。
すでにかなりの量を食べているにもかかわらずためらうことなくご飯が喉を通り胃袋に収まってしまった。
ご飯にタレをかけてさらに尻尾の身までいただく
しばらくしてやっと口の聞けるようになった画伯が「こんな美味しい中華は初めて食べた」「中華料理を見直した」との賜る。
「普段ラーメンと餃子しか頼まない人が何言ってんの?」という声が飛び笑いが沸き起こる。
一同一様に感動して、少々興奮気味に話しに花が咲いたのでありましたが、ここで終わりかと思っていた我々が甘かった。
「スープですどうぞ」
と大きな器に入った白濁したスープが登場してきたのだ。
トドメはトロミのついた濃厚スープ
そういえば昼間の打ち合わせの時に骨で出汁をとったスープを作ると言ってたっけ、忘れていた。
早速全員に取り分けたものの、もうお腹がいっぱいと言い出す人も出たのでありますが、先に口にした人の驚くような勢いの「美味しい!!!」という声に、他のものもためらうことなくスープを口に運び出した。
そしてその次には驚きと感嘆と歓喜の言葉が次々と飛び出す。
白濁した濃厚なスープはこの日これまで食べてきたどのハタ料理よりも濃厚で味わい深いものだったのであります。
私も一気にスープを平らげて少し残っていたのをお代わりしきれいに平らげてしまった。
ううむ、中華料理恐るべし。
これほどまでに食材の旨味を抽出し濃縮し増幅させる料理は経験がない。
いや、そんなことはない。
前回のクエ鍋の前半の肝を食べた時はこれと同じような感動があった。
おそらく、日本料理にしても中華にしてもフレンチにしても最高の食材を腕のいい料理人に調理して頂いたらこのような素晴らしい味のお料理ができるのでありましょう。
そういうお料理ばかりを追い求めている方々のことを「グルメ」というのではありませんでしたっけ?。最近の日本でのこの単語の使われ方は間違っているなと感じたのでありますがまあいい。
貧しい我々は本物の「グルメ」のように日頃からこのようなものを食べることはできないので、たまたま釣りにて食材が手に入った時だけしか味わえないのでありますが、これだけの料理は自分では作れないので、今後はハタ類を釣ったら毎回このお店に持ち込んで調理してもらうことにしようと心に誓ったのでありました。
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コメント
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お久しぶりです!忙しく見れてませんでしたがまだ見てない記事もありますが美味そうな料理がでたので思わずコメントします(笑)
まだ自分は南国の方面にはまだ釣りに行ったことがないのでわかりませんが、バラハタしかり、ハタ系はうまそうですね!清蒸ってのは美味しんぼの中ぐらいでしかみたことありませんが、美味そうです!あと骨のスープが凄そう。魚でも煮続けたらあんな感じになるんですかね?
あとえのさんのカンパチやアラ釣るならどの地域に釣りに行くのがオススメか教えてください!よろしくお願いします
投稿: 未来 | 2016年8月18日 (木) 09時28分
未来さん
お久しぶりです。いつもコメントありがとうございます。
今回のお料理は中華料理屋さんでもかなり腕の確かなお店で調理していただいたので
味は格別でした。
とてもシロートの私には真似できないお料理なのでお店に持ち込むことにしています。
おっしゃる通り、骨のスープは凄かったですよ。濃厚でこってりとした忘れられない味でした。
何匹分かの骨からダシをとったのであのような濃厚な味になるのでしょうが、
調理法には秘密があるのでしょう。
カンパチ、アラ釣りですが、私もEbb&Flowさんのツアーについて行って
釣らせていただいているだけなので、あまり参考にならないと思いますけれど、
経験的には九州方面ですね。
アラは6月に平戸あたりで泳がせ釣りの解禁になるときています。
理想を言えばどちらの魚も男女群島なのですが、そうそう行ける場所でもないので
なかなか行くのは難しいですけれど。
沖縄方面も大きなカンパチが良く釣れます。
でも水温の関係か食味はイマイチだそうです。
種子島で釣れたカンパチは想像以上に脂が乗って美味しかったですね。
あの辺りが美味しいカンパチの南限なのかも。
あ、食べる話じゃなくて釣る話でしたね。
長崎、五島方面はカンパチよりも、ブリ、ヒラマサの印象が強いですね。
大きなカンパチはもう少し南なのかもしれません。
9月に運が良ければ甑島に行くかもしれませんので、その辺の釣果も
ご参考になれば。
釣れるかどうかは、行ってからのお楽しみですが。
それではまた。
投稿: enos | 2016年8月18日 (木) 10時02分