本が読める喜び
最近本が読めるようになった。
本を買うお金がなかったわけではない。いい老眼鏡を手に入れたからでもない。
実はおよそ十年前に患ったひどい病気の後遺症で、この十年間ほど文字を読むことを体が拒否したのである。
このように書いても、こんなダラダラと長い文章を月に何度も更新していて嘘ばっかり!という声も聞こえてきそうですが、本当なのだから仕方がない。
なぜか「書くこと」はできるのに「読むこと」が苦痛で、ひどい時には漫画が目に入るのも体が拒否したほどで、数年前からやっと漫画が少し読めるようになり、一昨年あたりから新聞の拾い読み程度のことはできるようになったものの本に立ち向かうことができなかった。
その間にも何度かジャズや釣りという自分の大好きなカテゴリーの本なら読めるかもしれないと挑戦してみたものの一ページ読むのがやっとでなかなか本に近づくことができなかったのだ。
ところが先日、たまたま訪れたアウトドア・ショップにカヌーイストの野田知佑さんの本を目にし、手に取ったパラパラとページをめくってみるとなんだか面白そうだなという感覚が湧いてきて買うことにした。
カヌーイストの野田知佑さんは、日本におけるカヌーでの川下り遊びの元祖とも言える人で「日本の川を旅する」という本で1980年代に作家デビュー、その後アラスカのマッケンジー川やユーコン川などの川下り様子を紀行文にしてアウトドア雑誌Be-PALに掲載しており、それを読んだのがぼくの野田さんとの出会いだった。
冒険やアウト・ドアの遊びに飢えていた三十代のぼくは野田さんの本を読みあさり大いに興奮し触発された。
現在七十歳を過ぎた野田さんは、この十数年は四国の山の中での暮らしの様子などを雑誌に掲載していたようだが、「川を冒険する野田さん」のファンだったぼくにはそのような内容の文章が物足りなく感じるようになり次第に読まなくなってしまった。
今回手にした本ではつい最近、野田さんがカナダのユーコン川(下流はアラスカ)を一週間にわたりカヌーではなくて筏で下るというもの。表紙の写真には犬と一緒にオールの付いた筏に乗る野田さんの姿があった。
それは久しぶりに見る冒険する野田さんの姿でもあった。
本のタイトルと写真を見た時に何かぼくの心の中にポンッ!とはじけるような感覚が起こり、無意識に本を手にしていた。
それでもすぐにその本を読む気にはならず、二三日家の机の上に放置していたのだが、ある日ネットが使えなくなりパソコンを触る作業ができなくなった時に暇つぶしに本を手に取り読んでみたらこれが面白くてたまらない。
冒険する野田さんの文章は生き生きとしており、そこに登場する人やモノも実に興味深く面白い。
あっという間に十ページほど読み進んだ時に初めて「本が読める!」と気づいた。
そこからはもう勢いが止まらず二日間でその本を読み切ってしまう。
今までどうして本が読めなかったのか自分でも不思議に思うほど、本の文章はスルスルと頭に入ってきて心を躍動させてくれた。
同時に、時間の使い方がとても有意義になり生活の充実感が全く違って感じられた。
部屋を見回すと、この十年間に読まずに放置されたジャズ本が幾つかあったので、早速次はこれだと手にして読み始める。
まずは中山康樹氏の著書「マイルスvsコルトレーン」から取りかかる。
読む前はどうせマイルスとコルトレーンの話だ、大方の内容は自分でも知っているものだろう、などとタカをくくって読み始めたのだが、自分の知らない二人の歴史的事実を挙げながら二人のミュージシャンの生き様を描く内容に魅了され、これも二日で読んでしまった。
次は、たまたま出かけた際に駅の本屋で見つけたマイルス本「マイルス・デイビスの真実」を手にする。マイルス・デイビス研究家としても知られるジャズジャーナリストの小川隆夫さんの本で、音楽家マイルス・デイビスの生涯を自己のインタビューと周辺のミュージシャンや関係者の証言をもとに検証している興味深い内容なのだ。これも随分前から気になっていた本なのだが手が出せなかった。つい最近文庫本で再発された700ページもある分厚い本だ。
ちょうど先に読んだコルトレーンとマイルスが共演したあたりから読み始めた。
こういう読み方は正しい読書方とは言えないのかもしれないが、それ以前の時代のマイルス・デイビスには今はあまり興味が行かないだけなので後からじっくり読み返すつもりである。
それは、この本にするとちょうど100ページ付近から読み始めたことになるのだが数日で540ページあたりまで読み進んでしまった。同時に本に出てくるマイルス・デイビスのCDを聴いて楽しんでいるのだが、知識は音を違ったものとして認識させてくれるから不思議である。
さらに、これだけでは物足らずに同時進行で東京ジャズメモリーなるエッセイも読み進め残るは四分の一ほどとなんだか凄まじい勢いでジャズ本を読みまくってる。
かつて仕事で東京と大阪を毎週のように行き来していた頃、移動の新幹線の中でこのようなペースで本を読んだ時期があったがそれ以来の活字の吸収力だ。
まるで干からびていたスポンジが水を吸うかのようにどんどん活字を吸収してしまう自分が見える。
スポンジはどこまで水を吸い込んで膨らみ切るのか、今のところまだその兆候はない。
本を夢中になって読むと時間が過ぎるのが早い。
時間が過ぎるのが早いということは楽しい、ということと充実しているということの証なのではないだろうか。このところ日々がとても充実感にあふれ毎日が楽しくて仕方がない。
先日は新聞の本の紹介ページを読んで次なるターゲットを見つけた。
同じ音楽ものだがビートルズものだ。
こう見えても(どう見られているのか?)音楽の聴き始めはビートルズがスタート。
中学生の時ラジカセで録音して聴きまくったのがビートルズであり、ぼくの洋楽の原体験でもある。
そこから紆余曲折して今はジャズオヤジと化してしまっているのだが、ジャズだけしか聞かないジャズオヤジにはなりたくないので他ジャンルの音楽も実はよく聴いているのだ。ここ数年はジャズよりもクラッシック音楽のほうが聞く機会が多いのではないかと思う。
なんだか本が読めるようになったことで、最近ちょっと距離を置いていた最新のジャズにも少し興味が湧いてきたので、もう一度勉強のし直しをしようかとも思っている。
しかしながら、テレビには未だに拒否反応が強く、自分の意思で機械のスイッチを入れることは全くなく、家でもここ数年テレビを見ていない。一時は釣りヴィジョンを時々見ていたけれどそれも見なくなってしまった。
テレビを普通に見られる日はいつくるのであろうか?別にそんな日は来て欲しいとも思わないのだ。
なぜなら、今のテレビ番組に面白いと思うものがほとんどなく、むしろ見ていてこちらをバカにしているのか?と感じさせられることのほうが多くて不愉快なのだ。
テレビのことはさておき、同じ文章を読むにしてもPCの画面で読むのと本になったものを読むのでは読後の充実感がまるで違う気がする。
本の場合にはその本なりの厚みなりがモノとして目の前にあるという実在感がそう感じさせてくれるのだろうか。そう考えると本というのは単に知識を得るためのメディアというだけではなく、読み手の心を満足させる要素もあり、そのことが今のぼくの生活に充実感をもたらせてくれているのかもしれない。
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その間にも何度かジャズや釣りという自分の大好きなカテゴリーの本なら読めるかもしれないと挑戦してみたものの一ページ読むのがやっとでなかなか本に近づくことができなかったのだ。
ところが先日、たまたま訪れたアウトドア・ショップにカヌーイストの野田知佑さんの本を目にし、手に取ったパラパラとページをめくってみるとなんだか面白そうだなという感覚が湧いてきて買うことにした。
カヌーイストの野田知佑さんは、日本におけるカヌーでの川下り遊びの元祖とも言える人で「日本の川を旅する」という本で1980年代に作家デビュー、その後アラスカのマッケンジー川やユーコン川などの川下り様子を紀行文にしてアウトドア雑誌Be-PALに掲載しており、それを読んだのがぼくの野田さんとの出会いだった。
冒険やアウト・ドアの遊びに飢えていた三十代のぼくは野田さんの本を読みあさり大いに興奮し触発された。
現在七十歳を過ぎた野田さんは、この十数年は四国の山の中での暮らしの様子などを雑誌に掲載していたようだが、「川を冒険する野田さん」のファンだったぼくにはそのような内容の文章が物足りなく感じるようになり次第に読まなくなってしまった。
今回手にした本ではつい最近、野田さんがカナダのユーコン川(下流はアラスカ)を一週間にわたりカヌーではなくて筏で下るというもの。表紙の写真には犬と一緒にオールの付いた筏に乗る野田さんの姿があった。
それは久しぶりに見る冒険する野田さんの姿でもあった。
本のタイトルと写真を見た時に何かぼくの心の中にポンッ!とはじけるような感覚が起こり、無意識に本を手にしていた。
それでもすぐにその本を読む気にはならず、二三日家の机の上に放置していたのだが、ある日ネットが使えなくなりパソコンを触る作業ができなくなった時に暇つぶしに本を手に取り読んでみたらこれが面白くてたまらない。
冒険する野田さんの文章は生き生きとしており、そこに登場する人やモノも実に興味深く面白い。
あっという間に十ページほど読み進んだ時に初めて「本が読める!」と気づいた。
そこからはもう勢いが止まらず二日間でその本を読み切ってしまう。
今までどうして本が読めなかったのか自分でも不思議に思うほど、本の文章はスルスルと頭に入ってきて心を躍動させてくれた。
同時に、時間の使い方がとても有意義になり生活の充実感が全く違って感じられた。
部屋を見回すと、この十年間に読まずに放置されたジャズ本が幾つかあったので、早速次はこれだと手にして読み始める。
まずは中山康樹氏の著書「マイルスvsコルトレーン」から取りかかる。
読む前はどうせマイルスとコルトレーンの話だ、大方の内容は自分でも知っているものだろう、などとタカをくくって読み始めたのだが、自分の知らない二人の歴史的事実を挙げながら二人のミュージシャンの生き様を描く内容に魅了され、これも二日で読んでしまった。
次は、たまたま出かけた際に駅の本屋で見つけたマイルス本「マイルス・デイビスの真実」を手にする。マイルス・デイビス研究家としても知られるジャズジャーナリストの小川隆夫さんの本で、音楽家マイルス・デイビスの生涯を自己のインタビューと周辺のミュージシャンや関係者の証言をもとに検証している興味深い内容なのだ。これも随分前から気になっていた本なのだが手が出せなかった。つい最近文庫本で再発された700ページもある分厚い本だ。
ちょうど先に読んだコルトレーンとマイルスが共演したあたりから読み始めた。
こういう読み方は正しい読書方とは言えないのかもしれないが、それ以前の時代のマイルス・デイビスには今はあまり興味が行かないだけなので後からじっくり読み返すつもりである。
それは、この本にするとちょうど100ページ付近から読み始めたことになるのだが数日で540ページあたりまで読み進んでしまった。同時に本に出てくるマイルス・デイビスのCDを聴いて楽しんでいるのだが、知識は音を違ったものとして認識させてくれるから不思議である。
さらに、これだけでは物足らずに同時進行で東京ジャズメモリーなるエッセイも読み進め残るは四分の一ほどとなんだか凄まじい勢いでジャズ本を読みまくってる。
かつて仕事で東京と大阪を毎週のように行き来していた頃、移動の新幹線の中でこのようなペースで本を読んだ時期があったがそれ以来の活字の吸収力だ。
まるで干からびていたスポンジが水を吸うかのようにどんどん活字を吸収してしまう自分が見える。
スポンジはどこまで水を吸い込んで膨らみ切るのか、今のところまだその兆候はない。
本を夢中になって読むと時間が過ぎるのが早い。
時間が過ぎるのが早いということは楽しい、ということと充実しているということの証なのではないだろうか。このところ日々がとても充実感にあふれ毎日が楽しくて仕方がない。
先日は新聞の本の紹介ページを読んで次なるターゲットを見つけた。
同じ音楽ものだがビートルズものだ。
こう見えても(どう見られているのか?)音楽の聴き始めはビートルズがスタート。
中学生の時ラジカセで録音して聴きまくったのがビートルズであり、ぼくの洋楽の原体験でもある。
そこから紆余曲折して今はジャズオヤジと化してしまっているのだが、ジャズだけしか聞かないジャズオヤジにはなりたくないので他ジャンルの音楽も実はよく聴いているのだ。ここ数年はジャズよりもクラッシック音楽のほうが聞く機会が多いのではないかと思う。
なんだか本が読めるようになったことで、最近ちょっと距離を置いていた最新のジャズにも少し興味が湧いてきたので、もう一度勉強のし直しをしようかとも思っている。
しかしながら、テレビには未だに拒否反応が強く、自分の意思で機械のスイッチを入れることは全くなく、家でもここ数年テレビを見ていない。一時は釣りヴィジョンを時々見ていたけれどそれも見なくなってしまった。
テレビを普通に見られる日はいつくるのであろうか?別にそんな日は来て欲しいとも思わないのだ。
なぜなら、今のテレビ番組に面白いと思うものがほとんどなく、むしろ見ていてこちらをバカにしているのか?と感じさせられることのほうが多くて不愉快なのだ。
テレビのことはさておき、同じ文章を読むにしてもPCの画面で読むのと本になったものを読むのでは読後の充実感がまるで違う気がする。
本の場合にはその本なりの厚みなりがモノとして目の前にあるという実在感がそう感じさせてくれるのだろうか。そう考えると本というのは単に知識を得るためのメディアというだけではなく、読み手の心を満足させる要素もあり、そのことが今のぼくの生活に充実感をもたらせてくれているのかもしれない。
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ごぶたさしております。釣り、音楽、コーヒー、そば打ち、水泳、バイク、読書など楽しい1年を過ごされたと思います!
自分も趣味に打ち込みえのさんのような楽しい老後の人生を送ることが夢です。
今年もあとわずかですが、年越しそばネタなど、楽しみに待ってます!
投稿: 未来 | 2016年12月23日 (金) 20時00分
未来さん
お久しぶりです。
そば打ちネタ、先を読まれていますね。笑
大晦日はたくさん打つので更新は年明けになるかも。
趣味は生活を豊かにしてくれます。
好奇心さえあればなんでもその対象になるでしょう。
お金をかけずに楽しむこともできると思います。
実はこの一年、実は病気との戦いでもありました。
ブログには書きませんけれどね。
つらいときも前向きに楽しく生きようと思っています。
投稿: enos | 2016年12月24日 (土) 06時45分