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2017年1月12日 (木)

マイルス・デイヴィスの真実

釣り師の皆さんごめんなさい。
釣りに行けないのでイン・ドア生活が続くため今回もジャズのお話です。


先月、本が読めるようになった話の時にも今読んでいる本として書いた小川隆夫著の「マイルス・デイヴィスの真実」という本を読み終えました。

 

七百ページ近い分厚い本を読みきったのはいったい何十年ぶりのことか。でも、今あるのは読後の達成感よりもこの本がとても面白くて紹介しないではいられないので、書評的なものは本ブログでは初と思われるがここに書くことにした。

こん本は確か2002年に初版が出ていて、その時も興味があったのだけれど仕事が超多忙だったために本を読む余裕が全くないままに忘れ去っていたのでありますが、先月、たまたま入った本屋さんに文庫本として昨年10月に再発売されたばかりのものがあるのを見つけて即購入し読み始めたという次第。

内容はマイルス・デイヴィスというミュージシャンの一生とその音楽を、多くの関係者の証言を中心に構成しながらも、記憶というある種曖昧な事実の認識をレコーディングやメディアの記事などにある記録、そして過去に発行されているマイルスの自伝的書物なに書かれたものなどから検証されているところがこれまでのマイルス本と決定的に違うところで、本のタイトルにある「真実」の言葉が示すように、より、マイルス・デイヴィスというミュージシャンの生の姿に迫っているドキュメンタリー本といえましょう。

この本は文庫本では昨年10月末に発売されたばかりで、たまたま本屋で出会って初版本を買ったのですが、今回の文庫本化に際して2002年以降にわかった事実を加筆しての文庫本化なので、先の初版本を読んでいない私にはどの程度の違いがあるのかは分からないものの、本の内容的には最新かつ最も情報量の多いマイルス本になっているといえましょう。


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この本を読む直前に中山康樹著の「マイルスとコルトレーン」という本を読んだため、私の興味がその二人の時代にすっかりあったので、本を読み始める時に初めから読まずにちょうどコルトレーンと出会う頃の1950年代から読み始めて最後まで読み進めるという、イレギュラーな本の読み方をしてしまったのですが、小説などと違いぼくにとってこの本は歴史的資料的な意味合いを持つので特に問題なかった。
と、同時に、マイルスの音楽自体が確立されていったのが同じく1950年代半ば頃であり、私の好きなマイルスの音楽もその時代からが中心だったので、それまでの時代は言わばオマケ的印象もあったし、ある程度の知識は1990年に発売されたマイルスの自伝、クインシー・トループ著の「マイルス」でも読んでいたので、大体の内容は想像できるな、と、ある意味知ったかぶりしていたのであります。

以前の本ブログにも書いたように、この本ではマイルスが自分の音楽をどのように発展させていったかを、周辺ミュージシャンの記憶、レコーディングの記録、そして残されたレコードの内容からひもといており、これだけマイルスの音楽について語られている本はこれまでなかったのではないかと思います。

これまでのジャズ本は事実の列挙とミュージシャンの話す記憶に頼りすぎていた感があるのですが、この本では常にその双方を検証しながら構成されているので「歴史的事実」への信用度がとても高く感じられます。


何よりも素晴らしいのは、この本に書かれているレコーディングの様子の話などを読みながら実際にそのアルバムを聴くとこれまで聴いていたマイルスとは違った新たな発見があること。

マイルス・デイヴィスはぼくの一番好きなミュージ・シャンなので彼の正規盤についてはほとんどのアルバムを持っているのですが、これらの言わば聴き飽きるほど聞いたつもりのサウンドが、この本を読むことで新たな輝きを持って聴こえてくるところが驚きでもあります。

本を読むことでそのミュージシャンのサウンドが違って聴こえるという体験はこれまで無かった気がしますし、いったい、今まで自分が聴いていたマイルスの音は何だったんだろうと思えるほど新鮮にサウンドが響いてくる。
本を全て読み終えてみて分かったことは、自分の中のマイルスでも1950年代後半のコルトレーンとのバンドを作ったあたりから1981年の復活した「ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン」というアルバムあたりまではしっかり聴き込んでいたので、本に書いてある内容が同時に頭の中でサウンドとして鳴り出し、あえて聴き直すことも無かったのですが、それ以外の時代は自分では「好き」と思っていたほど聴き込んでいなかったことがバレてしまった。


最も聴くのをサボっていたいたアルバムが 「クールの誕生」というアルバムで、このアルバムを本を読みながら聴きなおしてみたらそのサウンドの素晴らしさが際立って耳に飛び込んできて、それと同時にその後のマイルスやアレンジャーのギル・エヴァンス、バリトン・サックス・プレーヤーのジェリー・マリガンのサウンドもこれまで頭にあった彼らのサウンドの響きの原点的なものを知ることができた。

マイルスのサウンドに限らず、その周辺のミュージシャンの音楽の元にあるもので知ることができたことで、いままで自分の頭の中にあった「ジャズのサウンドの発展」にある隙間がどんどん埋められていくのがわかり楽しくてしょうがない。
そのほかにもチャーリー・パーカーとマイルスの関係が非常に細かく事実に基づき書かれているので、マイルスだけでなくパーカーのこともこれまで自分の中にあった空白の部分がたくさんあったところが埋められたし、ビバップ、ウェストコースト・ジャズ、ハード・バップと発展するジャズの流れやそこにマイルスがどのように関わったのかもよくわかり、マイルス史のみならずこの時代のジャズ史が新鮮なほど明らかにされているところが素晴らしい。

個人的にはレスター・ヤングなどの中間派以前のジャズについては、その音楽そのものがあまり深く興味はないのだけれど、その時代のミュージシャンから影響を受けたマイルスがどのように新しいサウンドを発展させていったのかも書かれており非常に勉強になりました。

これまで、ジャズの本は随分たくさん読んできたけれど、これだけ音楽・サウンドの変化とミュージシャンの思いを体系的かつ事実に忠実に記すことに努力を払った本は無かったと思うのであります。

昨今のジャズ・シーンをぼくなりに眺めてみると、いまの若い人は「ジャズが好き」という割には過去のミュージシャンを勉強していない気がする、というより、ジャズは勉強するものでなくファッションとして聞き流すもの、おしゃれなライフスタイルのひとつとして演奏するものに変わってしまった感すらある。

先日、あるライブ・ハウスでリハーサルを終えた若いミュージシャンが店のマスターにウェス・モンゴメリーの有名な演奏を聞かされて「初めて聞く」「あ、これ聞いたことある」という声を発したのを聞いた時、時代は変わってしまったことを強く感じさせられてしまいました。

かつてぼくがジャズを聴き始めた1970年代にプロのミュージシャンがこんなこと言ったら鼻にもかけられ無かったんじゃないかな。

話がそれてしまいましたね。
ぼくが言いたかったのは、若い人がこういう本を読んで、ユーチューブでもいいから音楽をたくさん聴き込んでくれたら今のジャズ界の閉塞的・危機的状況は変わっていくのではないかなあという気にさせられたのであります。


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