EXCHANGE OF MOVEMENT@TNバレエ7THコンサートその2
TNバレエ7thコンサート、第一部のクラッシック・バレエをたっぷり堪能させてくれたパキータを終えてロビーで一服しながらバレエ初体験のナベテツさんに感想など聞いていたら、何人かの顔見知りに声をかけられて世間話などをしているうちに時間はあっという間に過ぎて第二部に突入。
第二部は第一部とは全く異なり、強力なビートのヒップホップ・サウンドが会場を圧倒すると同時に舞台いっぱいにカジュアルなピップホップ系ファッションに身を包んだ子供から若者まで数十人が登場しビシビシ、カクカク、うねうねとダンスを踊り始めた。
会場からは一部歓声も上がりクラッシック・バレエのコンサートとは全く違う雰囲気が一気に会場を包みます。
この手のダンスは最近ではヒップホップダンスと呼ばれるらしいのですが、僕の知る限りでは1980年代にニューヨークあたりから出てきたころは「ブレイクダンス」と呼ばれていて、僕が初めてニューヨークを訪れた1985年頃に登場してきたラップ・ミュージックと被って僕の中には強く印象に残っている。
この頃はまだインターネットもなく、僕らに入ってくるニューヨークの情報は雑誌や映画など限られた媒体で量的にも少なかったので、初めてのニューヨークでラジオから流れてきたラップを聴いた時には鳥肌が立つほどの驚きと衝撃を受けたのを覚えている。
そんなブレイクダンスを確か90年代に一度仕事で撮影する機会があり、当時の日本のブレイクダンスの一人者と呼ばれる方の率いるグループと仕事させていただいたけれど、今のヒップホップダンスは流れこそ当時のブレイクダンスの流れを踏襲するものの必ずしも全く同じものではなく、この二、三十年の間に随分と発展しているのだということを改めて認識させられた。
グループのキレキレのそしてウネルようなパフォーマンス、躍動する若いパワー的ダンスがひとしきり終わると、ステージ奥中央におかれたピアノにピアニストの栗田妙子さんが下手から登場し、いつの間にか上手側にはマイクを口に当てたおっさん(失礼)ボイスパーカッションのM-OTOさんという方が立っておられた。
ピアノの音色と共にM-OTOさんの口から発せられる強力なヒップホップビートに合わせて舞台両袖から方やヒップホップ軍団、方やクラッシックバレエ軍団が登場したかと思うとバレエ軍団は左右に回り込んでヒップホップ軍団を囲むような陣形になり同じ音楽で全く異なる踊りを踊る。
ところがそこには違和感はなく優美なクラッシックの振り付けとうねるようなヒップホップの振り付けがいい感じでミックスされている。
これは面白そうだぞ!と見ていると陣形を変えながら時には混ざり時には離れてダンスが踊られて行く。
そもそもクラッシックバレエというのはヨーローッパの手足の長い体型をより美しく見せるような作りになっているのに対し、ヒップホップはそういう西欧のクラッシックダンスのアンチテーゼ的にアメリカの黒人から生まれ出てきた否バレエ的なダンスなのだろうから、ダンスの基本に体型や振り付けという縛りが少ないのだろう。そんな理由から世界中に広まりその地に根付きつつある。手足の短い日本人にも取りつきやすいしかっこよく見えるダンスなのではないかと思う。
音楽の世界でもクラッシック音楽は依然として現代もクラッシックとしてあるのにも関わらず、ジャズやロックのような基本的な縛りの少ない音楽は世界中各地の要素を取り入れながらそれぞれに発展しているところがダンスの世界にもあるようだ。
画一性のクラシックに対して多様性のポップカルチャーという構造が見えるのが面白いのだけれど、ここではさらにその画一的クラッシックと何でもありヒップホップとを融和させる試みが行われているのが興味深い。
よくある「ダンス対決」的なお互いを主張して勝ち負けを決める、という構図ではなくお互いの踊りのいいところを活かしあいながら全体がうねるように、舞うようにヒラヒラとギラギラと一つになって融合し動いていく様が美しく感動的なのでありました。
これは新しいダンスの在り方なのかもしれないと思うほどの斬新さ。
音楽も栗田さんの曲とM-OTOさんのボイスパーカッションも実に見事に双方のお踊りとコラボして素晴らしかった。
まさにこのコンサートのタイトル通りの素晴らしいコンサートとなり、客席からはイェーイ!という歓声や拍手が上がり会場全体が熱気を帯びていくのがわかります。これはいいものを観たなあと思いながらあっという間のエンディング。
カーテンコールがなんども繰り返される圧倒的熱狂のもとにコンサートは終了したのでありました。
おそらく今回のステージはクラッシック、ヒップホップ双方のファンにも自分たちの知らなかった世界に触れ合うことができて見る側もダンスの世界が広がったんじゃないかな?そういう意味でもとてもいいコンサートだったと思います。
こういうステージは一度だけで終わらせてしまうのはちょっと勿体無い気もするほどの面白いできだった。振り付けも演出も相当入念に組み立てて行ったと思われるし、そのベースになる音楽だって作るの大変だったでしょう。細かいところで詰めるべきところはまだまだあるのだろうけれど、こういう方向の舞台が進化していくというのもダンス界にはありなんじゃないだろうか?などと評論家めいたことを思うのでありました。
最後に関係者の方々に一つだけ、いや二つ注文がありますよん。
一つ目は、もっと早く開場してほしいということ。きゅりあんホールのエレベータホールはそこそこ広さはありますが椅子はなくトイレも小さいのが一つしかない。しかもそこのトイレの張り紙には「トイレはホール内にたくさんございますのでそちらをご利用ください」みたいなことが書かれていて、それを見るたびにイラッとなってしまいますね。リハの都合などで開場できないという現場的段取りも理解した上での注文です。せめてロビーにまで早めに入れてしまうとか手はないのでしょうか?
二つ目は開演後に客をホールに入れるのはやめてほしいということです。
今回は特に最前列の人が後からサミダレ式にのこのこ入ってきたおかげでせっかくの素晴らしいダンスに集中できなかった。こういうのはルールとして厳しくしてもいいんじゃないかなあ。ぜひご検討を!
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