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2024年3月

2024年3月31日 (日)

サクラマスジギング2024春@尻屋丸

ここ数年一部の釣り師の間で流行っているサクラマスジギングに行ってきました。

サクラマスの釣りといえば一昔前までは春から初夏に川に立ち込んで釣るのがセオリーだったのですが最近は海に回遊しているサクラマスの群れを狙ってジギングで釣るというのが流行り始めているんですね。

この釣り方はまだ未開発の釣りなので分からないことも多く、また釣り自体もとてもゲーム性が高いのでルアー釣りファンの間でじわじわと浸透している感じなんですね。

かくいうワタクシも一昨年の初春に半ばダマされるように下北半島まで足を伸ばして釣ったのが始まりなのでまだまだ初心者という感じなんです。

 

ジギングで釣れるサクラマスは1キロ〜大きいのは4キロくらいまでで大型のものはマスというよりは鮭みたいな風貌になるのでありますが、食味はその辺のスーパーで売っている酒の切り身と比べたら雲泥の差で大変上品で美味しいのであります。

 

釣り方はジギングなのでジグを付けて海に落としてしゃくるだけ、というシンプルなものですが一般的なジギングとちょっと異なるところがあって、そのあたりがとてもゲーム性が高く面白いのであります。

 

今回お邪魔したのは下北半島の最東端にある尻屋港から尻屋丸という船であります。

 

釣行をコーディネートしてくださったのはこの釣りに長けていらっしゃるネイチャーボーイズのYさん。

昨年もお世話になり楽しい釣りをさせていただきました。

 

そんなわけで尻屋丸さんは昨年もお世話になっていて、昨年も今年と同じく二日間の釣りをしたのですが、昨年の僕の釣果は2日で一匹のみというナカナカの厳しい釣果でありました。

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その辺のリベンジも含めての今年の釣行で気合十分だったのでありますが、釣行初日は北風が強く早朝5時半に出船はできたもののその後風が強まり8時に早上がりということになり肩透かしをくらいます。船中の釣果三匹で終わるという厳しいスタートを余儀なくされてしまいました。

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予想外に釣りは早く終わってしまったので陸奥市内のホテルに戻り一眠りしたあと近くの温泉に行って疲れをとってリフレッシュし2日目の釣りに備えたのでありました。

 

天気予報では2日目は朝は凪予報なのですが午前中の早い時間から南風が強くなるということで、初日の帰り際に船長と話したところ、朝早めに出て4時間できればいいかな、という厳しい状況なのでありました。

2日目早朝4時前にホテルを出てまっすぐ港に向かうと4時半に港着。

すぐに船に乗り込んで5時過ぎに空が明るくなるのと同時に出船、沖に向かいます。

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最初は港から15分ほどのポイント。

期待に胸を膨らませてしゃくり始めますが期待に反して全く当たらず、正直焦りました。

船長は素早く移動を決断して3日前に良かったポイントまで走って釣り始めると、この日に最初に釣ったのは昨日と同じ怪魚ハンターさんでありました。

いいサイズのサクラマスで見ただけで羨ましくなる。そこから次々と皆さん釣り始めて僕はどんどんおいてきぼりになるんじゃないか、といよいよ焦っちゃうじゃないですか。

 

この釣りはジグを底まで落とさずに中層のタナを探る釣りなので一般的なジギングと違うのはまずはその辺りかな。

他にもしゃくり方に特徴がありしゃくる最初のスピードをシャープに素早くジグを動かした後のフォールにサクラマス食いつくという釣りなのであります。

 

さらにフォールで食いついた上にかかったサクラマスはすごいスピードで走るのでその辺りを上手くいなしたり、口切れをしないようにファイトしたりと色々難しい。

 

そんなしゃくりを1時間くらいしていたらようやく僕にもアタリがありヒットします。

その魚はグググ、と引き込んだと思ったらそのあとはあまり引かない。さおに重さはしっかり伝わっているもののなんだかサクラマスっぽくないなあと思いながら糸を巻き巻きしてくるとなんと上がってきたのは外道のタラじゃあないですか!

 

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ありゃあ、なかなか追いつけない。時間はどんどん経ちあっという間に6時を回り7時になろうかという頃、ようやくサクラマスらしいアタリがガツンとあったと思ったらグイグイ引くじゃあありませんか。今度は間違いないと糸を巻いていくと急にスッと軽くなる。あ!バレた!と思ったものの糸を巻き続けたら再び魚の感触が戻ってきてホッとする。

どうやら魚が上に向かって走ったのでこのようなことになったようであります。

この魚はなんとか無事にタモに収まりようやく僕もボウズ脱出組の仲間入りができました。

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この時点でまだ釣れていなかったのは釣った人の写真を撮るのに追われていたY店長とS氏の二人だけ。

二人とも焦ったろうなあ、と思う暇もなくSさんがヒットさせてボウズ脱出をし僕の隣で釣りをしていたY店長のみ取り残されてしまったのでなんとも嬉しくなる。

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なんたって普段はヒトが釣れずに四苦八苦しているところに寝起きでやってきてヒョイ!と魚をつっては「釣れるじゃないですかあ」と憎まれ口を叩くものですからこういう状況になるのはワタクシとしましては大変喜ばしい。

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ニヤニヤしながら釣っていると2本目がヒットし連続キャッチしていよいよいい気分になるではありませんか。

 

このまま波が上がって終了もありかな、なんて思っていたら意外と風は吹き始めなく波の立たない。

そんな中でY店長も一匹目を釣ってホッとしている。

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船長から全員キャッチ!というアナウンスがあり船内の雰囲気も和らぎます。

この時点で釣っている人は数匹釣り上げておりなんだか入れ食いになりそう、と思っていたら9時半を回るあたりから本当に魚の活性が上がって、ヘタクソなワタクシモイレグモードになり三匹、四匹と釣れてくれるじゃあありませんか。

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一昨年、昨年は一匹しか釣れなかったので自己記録の更新にすっかり気を良くしてしゃくり続けていたところズシンと重いアタリがありドラグが出された。これはデカイぞとズルズル出されるドラグを見てついつい焦ってスプールを親指で押さえてしまったのがまずかった。

1.2号のPEラインからプッツン!と切れてルアーと一緒に大型とお思われるサクラマスちゃんもサヨウナラ!

 

ありゃあ、やっちまった。でも今魚のやる気がある地合いなのでシステムを組み直している場合じゃない、と予備の竿からPE2号のリールを付け替えてしゃくり始めたらすぐに次の魚が釣れたのでありました。

長い一流しで一〜二匹ずつ釣れるというくらいのテンポで魚を釣って五匹を超えたらもう満足。いつやめてもいいぞ!と思ったものの風は心配していたっほど吹かず釣りは続けられました。

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この日の僕のタックルについてちょっと書きますと、ロッドはネイチャーボーイズさんから出ているサクラマスジギング専用ロッドのアイアンフリックというロッド。このロッド専用というだけあって先ほど書いたサクラマスジギングの特徴にピタッと合わせた竿の長さ、調子と他の竿では代用できないこの釣りにはパーフェクトな竿なのであります。

PEラインは1.2号と2号を準備しリーダーは20ポンドと25ポンドをそれぞれ結びました。

使用ジグは実績あるロッドと同じネイチャーボーイズさんの鉄ジグをメインに80グラムから160グラムくらいのジグを色々試してみましたが、この日は鉄ジグが圧倒的によく釣れました。

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この釣りはジグのアクションと色がとても重要で魚の好む色がコロコロ変わるところがとても難しい。

今まで入れグッていたかと思うと突然当たらなくなったりするんですね。

そこからはまたゼロからのスタートであたりカラーを探すことになるという訳であります。

 

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この日は朝の4時間くらいしか釣りの時間は無いだろうから、とお昼ご飯は用意してこなかったのでお腹が空いてきたあたりまで魚は釣れ続け、トップの怪魚ハンターはなんと14匹も釣り上げた。

二番手は十匹、他のメンバーは多くが八匹で船中のトータルが8人で79匹というすごい釣果になってしまった。

 

僕もクーラー満タンでもう釣るのにも疲れたので船上カフェのエノカフェ尻屋丸店を開店し船長はじめ釣り師の皆さんに無理やりコーヒーを飲ませたのでありました。

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ギラギラ目の船上に穏やかな空気が流れて釣りの楽しさが一層増した感じが得られたのでカフェ店長のワタクシも大満足。

 

船長の取り計らいで少し時間も伸ばしていただきサクラマス釣りを満喫できたのでありました。

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船長、釣り師一同の皆さんありがとうございました。

 

来年もこのくらい釣れたら楽しいなあ。

 

 

協力:ネイチャーボーイズ  尻屋丸
写真協力:Ebb&Flow 
釣りに関するお問い合わせはルアーショップEbb&Flowへどうぞ
ブログ掲載の文章、画像の無断転載は禁止です ©️enos1091 All rights reserve

 

2024年3月 8日 (金)

渡部貞夫クァルテット@鎌倉芸術館

渡部貞夫さんのコンサートに行ってきました。

楽しかったです。

おしまい。

 

という感じの感想になるかなあ、と行く前は思っていたのであります。

何故なら貞夫さんの最新作であるサントリーホールのライブを聞いたら古いバップ時代の名曲集みたいになっていて、演奏こそ円熟しているものの新しい驚きなどはないんだろうなあ、と勝手に思い込んでいたのですね。

 

今回貞夫さんのコンサートに行くことになったのもたまたま我が家で生活用品を購入している生協のカタログでチケットを売っていたのを見て行くのを決めた、という安易なもので、御歳91歳という高歴の貞夫さんの見納めかなあ、などというふとどきな発想もあり(貞夫さんごめんなさい)その程度の関心で行くことを決めたんですよ。

 

コンサート当日、会場の鎌倉芸術館は大船駅から徒歩圏内の場所にある新しい施設で初めて行きました。

会場に入るとすでに集まって開場待ちをしているお客さんは僕と同世代近辺の年寄りばかりで予想通りの展開。

ホールは小ホールで400人くらいのキャパかな、僕の席は後ろから6列くらいのど真ん中、ステージまでは遠いけれどいい角度だったし、小ホールなのでそれほど距離もなくジャズのコンサートとしては程よいサイズの会場でした。

 

開演を待ちながらステージ中央にセットされたピアノ、ベース、ドラムセットを見ながら貞夫さんを見るのは久しぶりだなあ、と振り返ってみた。

僕が貞夫さんをみたのは18歳の時、今から半世紀近く前のことで場所は池袋の西武デパートの屋上でのフリーコンサートだった。

日野照正さんのグループとのカップリングライブで二、三局しかやらなかったかな。

実はこれが僕のジャズの生ライブ初体験でありまして、それまでラジオやレコードでしか聴いたことのないジャズを生で初めて観たのであります。

ビールとジャズは生に限る!という言葉がある通り、その時の体験は衝撃的で何しろ貞夫さんも日野皓正さんも当時の日本のジャズの最先端をゆくトップグループだったのですごい演奏をしていた。日野さんは確かニューヨークに行く直前のライブでしたね。

 

そんな衝撃的な貞夫さんとの出会いの次に観たのは大学の学祭に貞夫さんのグループを呼びその時はコンサートの裏方にも入っていた僕はすごくいい席で貞夫さんを観ることができた。

当時は確かフュージョンに行く直前の演奏スタイルをしていたように思う。

コンサート後は当時の渡辺貞夫クァルテットのピアノをつとめていた本田竹広さんが僕らの出店していたジャズクラブへ遊びに来てくれて、良同士セッションをしたのを覚えている。

 

問題はそこから半世紀弱の間だ。

カリフォルニア・シャワーというフュージョンアルバムを出してからの貞夫さん音楽スタイルに僕が興味を失ってしまって以来全く観に行こうという気持ちも起こらず今まで来てしまった。

映像の仕事をしている頃に何処かでお会いしたような気もするのだけれど、ライブを見た記憶は湧いてこないからおそらく大学生時代以来の渡辺貞夫クァルテットを見ることになったのでありますね。

 

そんな風におよそ半世紀の時の流れを振り返りながら待っているとやがて開演のアナウンスがあり客電が落とされステージに貞夫さんがメンバーを引き連れて現れた。

少し猫背になってひとまわり小さくなったように感じたけれど元気にスタスタと歩いてステージに現れたその姿は91歳のおじいちゃんには見えなかった。

小さくなったと感じたのも他のメンバー、特にベースのヒトが大きかったのでそう感じたに過ぎなかった。

 

ステージ中央まで来ることもなくおもむろにソロでサックスを吹き始めた貞夫さん。

8小節吹いたところからバックのピアノトリオが入る。

曲はホレスシルバーのpeaceだった。

 

どうせビバップの曲から始まるんだろうくらいに考えていた僕は驚いた。60年代後半のバップから次の時代へ移る時期の作曲者ホレス・シルバーにとっても新しいスタイルを模索していた時期の曲だったからだ。

 

貞夫さんのサックスは想像以上に朗々と鳴り曲を歌い上げる。音色も美しい。

演奏が終わると曲紹介のMCをご自身でされて「ウクライナの戦争が始まってからは必ずこの曲から始めています」と言っていた。

貞夫さんの平和を願う気持ちのにじみ出た素晴らしい演奏だった。

 

二曲目は50年代の曲ローラ(laura)

美しいバラード曲をミディアムハイの軽快なテンポで演奏する。

アドリブの貞夫節は健在で長いブレスも難なくこなし全く年齢を感じさせない。

目を閉じて聴くとそこに91歳のおじいちゃんの姿は現れなかった。

 

三曲目以降は曲は古目の曲だったけれど、比較的マイナーな曲を新しいアレンジで演奏が続く。

 

バックのピアノ、ベース、ドラムも素晴らしかった。

いずれも貞夫さんから見たら子供くらいの年齢の若いメンバーでピアノは小野塚晃、長身のベースは須川崇司、ドラムスは竹村一哲というメンバーで不勉強な僕は初めて観るミュージシャン達だったが演奏の腕前はさすが貞夫さんのバックをつとめるだけあって超一流、リズムのキレ、コードワーク、音使いなど素晴らしい。

自分のソロを吹き終えた貞夫さんは左手をポケットに突っ込んで舞台袖に歩いていき上着を脱いでから三人の演奏を嬉しそうに見ていた。

親分が弟子達の生き生きとした演奏を目を細めて見ている感じで微笑ましい。

そして自分の出番が近くになると舞台中央に戻ってきて吹き始める。

カッコ良かった。

音色が素晴らしいし音のパワーがやはり年齢を感じさせない。指も動きまくっている。

その姿を見ていたらシロートではあるけれど同じサックス吹きの僕には「おまえなにやってんだよ!ちゃんと練習しろよ!」と叱られた気分だった。

 

前半で5〜6曲、およそ一時間の演奏だったがいずれも古臭い演奏は全くなく、今の貞夫さんの最新の音楽を聴かせてくれて感動した。

91歳でこの時間をサックスを首にぶら下げてステージに立ちつづけるというだけでも凄いことなのに。

 

一昨年93歳で亡くなった僕の父親の晩年を思うとすごすぎる。

昨年ラジオ番組に出ていた貞夫さんが日常のことを話していたのを覚えているけれど、健康管理と練習にはシビアに取り組んでいるという話だったのもうなずけた。

 

 

15分間の休憩を挟んで後半はブラジルの曲をメインに自己のオリジナル曲を交えて一時間吹き切った。

最後はノリノリの演奏で会場は拍手で合わせるが、観客もジャズファンが占めているようで良くある頭打ちをする人はいなくちょっと感動する。

 

曲間のMCで作曲者達との思い出を短く語る貞夫さんの話も面白かった。チャーリー・マリアーノ、バーデン・パウエル、アントニオ・カルロス・ジョビン、高柳昌行などかつての仲間達は皆すでに天国に行ってしまってるのだが、貞夫さんの話からは良き思い出を語っているようで寂しさや悲しさは感じられなかった。

 

アンコールはビアのとのデュオで美しいバラードを吹いてコンサートは終わる。

曲名はわからなかったが聴いたことのある曲だった。

 

会場から出て駐車場に向かいながら、僕はとても清々しい気持ちでいた。

想像していた以上に若々しい貞夫さんの音楽に励まされていい気分だった。

また一流どころの演奏の素晴らしさを堪能できたことも刺激になった。

 

貞夫さんはこの後も月一ペースで各地を周りコンサートをするらしい。

いつまでも元気にサックスを吹く姿を僕らに見せてください。

 

 

ブログ掲載の文章、画像の無断転載は禁止です ©️enos1091 All rights reserve

 

 

 

 

 

2024年3月 7日 (木)

映画パーフェクト・デイズを観てきた

初めに書いておきますが、本文では映画の内容について語ってしまうのでこれから観ようという方にはネタバレになってしまうので読まないことをお勧めいたします。

 

映画の話を本ブログで書くのは初めてかもしれない、というくらい普段映画は観ないのでありますが、今回は音楽評論家のピーター・バラカンさんおラジオ番組で話題になっていたことや釣り仲間がパーフェクト・デイズを観て良かったとやはり音楽の話を絡めて投稿していたことに背中を押されて観に行ったのであります。

 

映画のストーリーはとてもシンプルで、公衆トイレの清掃を生業とする初老の男が主人公。

この男の規則正しく繰り返される日常の中で出会うヒトビトとの大小の出来事を通じてそれぞれの人間模様を描いていくのでありますが、ドラマチックな結論はどこにもなく淡々と日常が描かれていくというものでありました。

映画館で延々と長く続いた宣伝や予告編に辟易としながらもようやく始まった本編を一眼見て驚いた。

 

この時代にスクリーンの縦横比が4対3の狭い画角だったのだ。

フィルムで撮るにしろハイビジョンで取るにしろ16対9の画角比がノーマルになっている今時にワザワザ4対3の画角で撮るのは何故なんだろう?

と思いながら本編は始まりどんどん進んでいく。

 

主人公の実に無口なおじさんは毎朝早く近所のおばちゃんの道路を掃除するほうきの音で目を覚まし、布団をきちんと畳んで歯を磨き、茶碗に植えた幼木たちに水を与えると作業着に着替えて家を出る。

家の前の車に乗る前に必ず自販機で缶コーヒーを買い込みそれを飲みながらカセットテープでカーステレオを鳴らして仕事に出かける。

このカセットテームから流れる音楽は1960年代後半から72年くらいまでの数年間にヒットしたものばかりで主人公の世代を表すだけでなくそれぞれ使われるシーンで物語を非常に効果的に引き立てている。

仕事先では実に実直に生真面目にトイレを美しく掃除し、仕事を終えると風呂屋に行き湯を浴びると浅草の一杯飲み屋に出かけてチュウハイらしきものとつまみが出されてきたのを飲み、寝床で眠くなるまでは文庫本を読み眠る。

休日にはコインランドリーで作業着を洗濯し、趣味のアナログカメラの写真を現像に出し新しいフィルムを一本買い、古本屋で次に読む安い文庫本を買いバーに出かけてちょっと贅沢な酒を飲む。さらにこの店の美人ママには好かれている、というような日常が繰り返されながら映画は進んでいく。

主人公の暮らしは清貧といってもいいくらいの清々しく慎ましやかなものなのだがその内容はある意味パーフェクトでありましょう。

 

そんな日常で関わったりであったりするヒトビトの日常が次々と現れるのがシンプルな繰り返しに見えるこの映画を見ていて飽きさせないところで、トイレに閉じ込められて迷子になってしまった子供とその母親、仕事仲間の怠け者の若者とその彼女、銭湯で出会うじいさんたち、毎晩通う飲み屋のオヤジやそこに来る客、公園で踊るホームレスのじいさん、写真屋のオヤジ、本屋のお姉さんなどがどれも大切な役割をしているようだ。

 

ストーリーが大きく変わるのは仕事仲間の若者が主人公から金を借りたまま仕事をあっさりやめてしまうあたりから動き出し、姪っ子の中学生くらいの娘が家出をして主人公のアパートに転がり込んで来るところからこの映画のテーマらしきことが語られていく。

無口なおじさんは家出してきた姪っ子を受け入れて仕事にも連れて行き当然食事も一緒にゆくことになる。

この二人の短い会話の中にあらわれる。「母親と主人公のおじさんの住む世界は違う」と姪っ子は主人公に語る。主人公は「確かに違う世界に住んでいる」というと姪っ子は「じゃあ私はどっちの世界に住んでいるの?」と問いかけるが主人公ははっきり答えない。

それは僕には「世の中は一つのようで様々な世界がある」と語っているように思えた。

この映画に登場する様々な脇役の人たちみんながそれぞれの慎ましやかな、あるいはそうでない別々の世界に住んでいるというように感じた。

さらにその子この世界はいまの時代を映していて、若者の世界と主人公のアナログ世代では全く違うものでそれらもそれぞれ細分化された個々にはとても狭い世界に暮らしながらその中で喜怒哀楽があり暮らしているということを感じさせられた。

これらの感想はストーリーが進んでいくとさらに明白になる。姪っ子を引き取りに来た主人公の妹は高級車に乗るセレブのようで主人公との住む世界の違いを具体的に表している。

しかし、この映画ではその理由などについては触れずにどんどん次のシーンに展開していってしまうのでありますね。

 

色々小さな事件がありながらクライマックスに起こるのは、休日にいつものように本を買ってクラブのママの所に行って主人公は開店前の店内でママと男が抱擁しているのを見てしまい慌ててその場を去り、やけ酒まがいのハイボール缶3本とピースを買って隅田川の河原でヤケ飲みヤケタバコを吸ってむせている所に男から声をかけられる。

この男こそママの別れた元夫ですでに再婚済みなのだがガンの宣告を受けて急に前婦のママの所を訪れたことを主人公に告げる。

そしてママの事をよろしくお願いします、とまで言われた主人公は「いや、そんなんじゃないですから」と言いながらもまんざらでは無いようで、シーンはそのままラストシーンの仕事に向かう運転する主人公の笑顔のバックでニーナ・シモンのフィーリング・グッドという曲が延々と流れて終わって行くのだが、ストーリーが全て終わった後に本編でも折々に登場する大きな楠の緑の木漏れ日を背景に日本語の木漏れ日についての解説がテロップで流れる。

唐突に現れたので僕はちゃんと理解できなかったのだが、木漏れ日のキラキラは常に変化し同じ光は二つと無い、というような事を言っていたようだ。

 

映画を観終わってしばらくの間僕はこの映画のことをよく理解できないでいた。狭い画角、古い音楽も僕の世代の一つ前のものだったので知っている曲が少なくピンとこなかった。それぞれのシーンに結末がない。田中泯さん演じる踊るホームレスは何者なのか?(田中泯さんの踊りが好きな僕にとっては、この役が田中泯さんそのものに見えてしまいホームレスだと気づいたのは映画の終わる頃だった)、主人公が寝ている間に必ず現れるイメージ映像の意味など映画全体の構成を頭の中で整理できなかったのだ。

家への帰り道はずっとこの映画のことを考えていたのだが、帰宅してしばらくしてようやくなんとなく自分なりに頭の中で整理が進んだら映画のテーマらしきものが見えてきた。

 

それは人の生活、人生、住む世界は皆それぞれ異なり同じものは二つと無いということ。人だけでなくこの世の全てに同じもの、同じ瞬間は二つと無いこと。そしてそれぞれがとても多様で個性がありそれぞれがとても大切だということなのではないかと思えてきたのでありますね。

画角を狭くしたのも、ある時代の音楽にこだわったのも狭い自分の世界をきわ立たせるための演出だったのでしょう。

さらに、僕の日常だってそれなりに規則的で個性的なパーフェクトデイズじゃあないか、と思えてくるととても前向きな気持ちにさせられたのでありました。

 

ご覧になった皆さんの感想もお聞きしたいのでコメントどしどしくださいね。

 

余計な話だけれど、実は一つだけ引っかかったカットが有って、ストーリ序盤の公園での午前中のシーンで主人公がアップに移された時に背景の公園の時計が4時を指していたところに目が行っちゃって、ず〜っとそのことが気になっちゃっていたんですが、ただのミスショットだったようで、こういうところを見ちゃうからダメなんだよなあ、と自分に言い聞かせたのでありました。

 

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2024年3月 5日 (火)

一年ぶりのシーバス釣り@長崎丸

一年ぶりに本牧の長崎丸さんにシーバスを釣りに出かけてきました。

当日はお天気も良く気温も暖かめだったのでバイクでツーリング気分で長崎屋さんへ。

 

お店で一年ぶりに親父さんに会って、去年の釣行でたくさん釣りすぎて右手首が腱鞘炎になってしまった話などする。

お店から少し離れた本牧港まではたまたま一緒にいたグループが道が不安というのでバイクで先導してなんだか箱根駅伝の白媒体になった気分。

僕のバイクも白だし。

 

港に着いたら思いの外乗船者が多くて胴の間以外はほとんど埋まってた。

どのみち胴の間で釣りするはずだったのでそこに釣り座をとって出船までの間色々準備する。

 

とにかく一年ぶりなのでなんとなく勝手を忘れていて自分でも怪しい。

前日に長崎屋さんのホームページを見てヒットカラーをチェックしてその色を選んでおいた。

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8時前に出船。

久しぶりに見る本牧沖からの横浜の景色が懐かしい。
快晴の空が海に映っていい風景でありました。なんだか釣れる予感。
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しばらく行くといつもは煙突から煙を黙々あげて大きな音を立てていたプラントが静かに佇んでいた。
確かここはニュースでもやていた製鉄所の高炉で、脱酸素への取り組みの一環として廃止されたとか。
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煙もくもくの頃は、ありゃあひどい煙だなあ、なんて思って見ていたけれど、こうして静かになってしまうと何と無くさみしく感じるから不思議なものである。

こうして海側から工業地帯を見るというのも釣りでもしない限り見られないので、世の中を見る視点としてはとてもいい経験をしているなともおもった。

 

移り行く時代を感じながら最初のポイントへ船は進む。

 

最初は鶴見のバースに行くがここはイマイチだったのですぐに移動する。

 

するとそのお気に鳥山ができていてシーバスの反応も良いというのでそこで始めたらすぐにヒット。

ジグはアンチョビットシャープの赤キン。

 

ここから5匹くらいほぼ入れ食いでキャッチしたので今日は30くらいは釣れるかな、と思った途端に当たりが遠のく。

鳥山周りを小移動しながらやって10匹くらい釣れた。

周りの人はもっと手際よくかけている感じ。

 

鳥山周りから風の塔に移動するも反応がないようなので釣りはせずにそのまま木更津おきのタンカー周りに移動します。

 

ここでは初めて見たもののアタリが出ないのでルアーのカラーを変えて見たらすぐに来た。

これはいけるぞ、と思ったらその後が続かない。

ここから色々カラーやジグのタイプを取っ替え引っ替えやっているうちに時間は刻々と過ぎてしまった。

 

ようやく当たったアンセスターのピンク系のジグでプチ入れ食いになり6〜7匹追加したので、このままいけば30いけるか!と思った途端アタラなくなる。

そこから先のタンカー周りでの釣りは当たりルアー探しで色々やってるうちに周りは順調に釣り上げていて焦ってしまう。

 

色を真似して釣ってみるもポツリポツリと来るのではあるが急にバラシが大きなってしまい数が伸びない。

 

いつの間にか昼もすぎる時間になると今度は疲れた手がつってしまったりして戦意も落ちてしまった。

 

結局思い通りに当たりルアーを対応することができず19匹で終了。

 

この日のトップは31匹。平均して20以上釣れていたのでちょっぴり敗北感を感じて帰ってきたのでありました。

色々反省点はあるので今シーズンはもう一度くらい行ってみようかな。

 

釣りに必死で釣りの写真が一枚もない。次はもう少しココロに余裕を持って行こう。

 

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2024年3月 2日 (土)

爆風の伊勢でビンチョウマグロ釣り@小海途丸

1月のモルディブ釣行以来1ヶ月以上釣りに行っていない。

こんなに釣りに行かない期間が長いのはこの十年間なかったことではないかとお思うのだけれど、ほかに新しい興味が湧いてしまったこともあり釣りに行きたい気分にならなくてスルッと1ヶ月が過ぎてしまったのでありました。

二月の末になってようやく以前から予定していた伊勢のビンチョウマグロ釣りに行くことになり久しぶりにジギングタックルを用意して出かけることになりました。

 

伊勢のビンチョウマグロ釣りは昨年10月の末にも出かけていますが、その時は潮と風が悪く一日やってアタリもなしという悲しい結果でした。

しかもその時は釣りの前夜に横浜を出て車を走らせロクに寝ずに出船したものだから眠くて釣りにならなかった。それでもやりましたけれどね。

その反省をふまえ、今回の行程は釣りの前日に伊勢に移動して一泊してしっかり寝てから翌日に釣りをして帰るという行程に変更したのでありました。

 

ところが出発の日の朝、横浜のルアーショップ 、エブアンドフロー さんの駐車場に集合した時は爆風が吹き荒れていてまるで台風のよう。

集まった一同も口々に「本当に釣りできるんですか?」と行っていたが翌日は現地の風が落ちて釣りになるという船長の話だったので出かけて行ったのであります。

 

綾瀬スマートインターから東名高速→新東名→新名阪道→伊勢道と高速を走り抜けて行くのですが北からの爆風は西に移動する我らの車には横風となって激しく車にあたるのでハンドルを握る手の力を緩めることができないほどで、明日の釣りは大丈夫?という不安は増して行くばかりなのでありました。

片道450キロあまりをおよそ7時間半かけて走ってその日の宿泊先の志摩のビジネスホテルに到着した時も爆風は吹き荒れており、ここまで来てしまってもまだ釣り師一同は本当に船出るのかなあ、と口々に言葉を発するものの、ここまで来てしまったらもう運命に身を委ねるしかないのであります。

ホテルの近くの居酒屋で酒を飲んで気分を紛らわし早めに寝ます。

翌朝の出船時間も1時間遅らせますと連絡が入った。

 

釣り当日、朝4時半に目が覚めて5時前に出発。

コンビニで食事や飲み物を買って英虞湾の小海途丸に向かう間も昨夜と変わらぬ爆風が吹いている。

5時半前に港に着くと今回も同行してくださった名古屋のルアービルダーのTさんが既に来ていて、車から出て来て挨拶するも本当に今日出られるんですかね?という話にすぐになる。

 

やがて港に船が来て釣り具を積み込むも、船長からは風が思ったより落ちないのでしばらく様子を見ましょう、ということになり夜明け前の寒さに耐えるためにお湯を沸かしてエノカフェを開店し、暖かいコーヒーを飲んで気分転換をしたのでありました。

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8時頃になって少し風が落ち始めたように見えたので出船。

ところがお気に向かうとやはり波は高く危ないので風裏のポイントに入って根魚釣りをしながら風が治るのを待つことになったのでありました。

 

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水深約100メートルくらいのポイントで根魚釣りを始めたら最初の一投のふたしゃくり目で早くもヒット。

 

小さい魚だなあ、と思いながらも魚の感触を楽しみながらあげて来たらレンコダイだった。

 

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こりゃあ入れ食いかな?と思ったもののそのあとはあたりが続かず、ポツリポツリとカサゴやボッコなどが上がり感じの釣りになりました。

本命はマハタだったのですがなかなか本命ちゃんは来ない。

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同行のホリさんにそれらしいあたりが一度会ったものの乗らなかった。

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そのあと引率のY店長にでかいアタリがあり竿がぐいぐいと引き込まれるファイトを繰り広げ、マハタか!?と思われたものの上がって来たのはサメちゃんでありました。

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午前11時頃になってようやく風も波も落ちて来たので沖に向かい本命のビンチョウマグロを狙うことになりました。

沖に出たら海水温も高く潮もよくベイトの反応もバッチリ写っているようで期待をする。

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水深60〜100メートルくらいの中層がポイントで船はドテラで流します。

 

今回僕が用意したタックルは3セット。

ベイトタックル二本にスピニングタックル一本。

糸は3号、4号がベイトタックルでスピニングは5号。

メインはベイトの3号タックルを使いました。

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細いラインを使うのは潮になるべく流されないためでマグロの中では比較的小型の多いビンチョウマグロならこの太さでもなんとか取れるという判断ですがうっかりでかいキハダマグロなんかがかかった時にはアウトですねぇ。

 

ジグは同行のTさんの製作するツキジグの330グラム。こいつをタナまで落としてしゃくってきます。

 

船長のアナウンスでは潮はいいので魚が通ればチャンス、と言うのですがなかなかマグロの群れが現れない。

しばらくやっていると船長から90メートルくらいに反応があると言うので気合いが入るもののなかなかアタラないのでありますねえ。

その後も何度か魚影が魚探に映ってチャンスはあったもののアタリには誰も巡り会えず。

風も波も次第におさまり凪いできたもののアタリはなかなか出ず苦戦をしいられます。

 

次第に疲れと寝不足で眠くなり一人、二人と釣りをやめて休み始め気づいたら僕とY店長しかいなくなっていた。

 

そのうちに僕にコツッというアタリらしき感触があり、それを口にしたら休んでいた一同が戻ってきて釣りを始めたもののそこからはまたアタリ無く。

 

船長が出たのが遅かった分粘って時間を延長してくださったもののとうとうアタリはなく終了となり本命マグロの姿は見ることなく終わりました。

 

港へ戻る間は船のキャビンで爆睡してあっと言う間に港に着いていた。

朝から沖に出られたらもう少しチャンスはあったのかなあ、と思うものの自然には勝てない。安全第一で無事に釣りができたことでよしとしましょう。

 

午後5時過ぎに港を出て一路横浜へ。きた道を7時間半かけて帰ってきて夜中に解散となりました。

 

同行の皆さんお疲れ様でした。無事に帰れたのでよしとしましょう。ガッカリ(笑)

 

写真協力:Ebb&Flow 
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