真夏の昼の蕎麦打ち
これまで真夏に蕎麦を打ったことはなかったんですよ。
理由は単純で、暑くてイヤ!という事と湿度が高いのでうまく蕎麦が打てないのではないかという不安があったからなんです。
もう一つの理由に、私の実家のある埼玉県南部はうどん文化圏でありまして、お盆に人が集まる時などは手打ちうどんを振る舞うのが慣わしであったので、夏に蕎麦!という発想自体が無かったんですね。
ところが昨年秋にネットで大量購入したそば粉が八月に賞味期限を迎えようとしていたので、早いうちになんとかやっつけなくてはと思っていたところに、お盆で実家に帰省時に今はバラバラに暮らしている娘たちが全員集まるということなので、それじゃあ蕎麦でも一丁打つか、という事になったのでありました。
それでも冷房のない部屋で蕎麦を打ったらひたいからしたたる汗をどうやって処理しようかなどと真面目に考えたんですね。何しろ、一旦そば粉に水を差したら両手はそば粉でくにょぐにょに汚れているので汗を拭くのもままならないからです。
ところが、お盆のある日、お天気男が都合よく作用したのか、蕎麦打ち当日はお天気がイマイチで雲が多くおかげで無風灼熱地獄埼玉県にしては涼しい夏の日となったので大喜び。
陽が出ないうちにさっさと打ってしまおうと、朝の八時過ぎからお昼ご飯を目指して打ちにかかりました。
目標はお蕎麦二キロ!
大人が八人も集まる上に珍しく若い人が多いので、どのくらいの量を食べるのかちょっと予測ができなかった。通常は一人前二百グラムくらいなんですが、それで計算しても1.5キロのお蕎麦を打たなくてはならない。
一度に1.5キロのお蕎麦を打つというのはかつて一度だけトライした事がありましたが、なかなかの力技で正直この真夏の昼のクソ暑い中で挑む勝負ではないと回避しようか散々迷ったあげく、滅多にない機会でもあるので挑戦することにしました。
ということで、二八そばを打つので、そば粉八百グラムにつなぎ粉二百グラムで合計一キロ。これに水がおよそ500cc入るので打ち上がったお蕎麦はおよそ1.5キロとなる訳です。
久しぶりに見るコネ鉢にうず高く盛り上がった粉を見てちょっとため息。
本当に打てるのであろうか?という不安が去来します。
一度に大量の蕎麦を打つ上で一番難しいのは何と言っても伸す工程なんですね。
均等に薄く伸ばさにゃあならん上にうまく伸びたとして今度は大きく広がって板に収まり切らなくなるのは目に見えている。
ぺらぺらに伸びた蕎麦生地が板からはみ出して垂れ下がる光景が脳裏に浮かび、すでにこの段階で蕎麦に負けていた。
逡巡しながらもえいや!と最初の水およそ250ccを粉の中央に投入。
もう後戻りすることはできません。赤子が泣こうが雷が落ちようが、そばを打ち上げるまで手を抜くところがない。
と、言いたいところなんですが、最近ある製粉会社さんのそば粉を買って袋の裏にある「そばの打ち方」なるものを見ていたら、生地がこねあがった段階でビニール袋に入れて2〜30分置くと水分が生地に浸透して良いということが書いてあり、かつて、本ブログにもそうやって打ったことを書いたと思われるのですが、一度試してみてこの方法はいけるなと思ったので、今回はとりあえず1.5キロの生地を作り、ビニール袋で寝かせている間に、もう600グラム打つという作戦に出ました。
まずはえいや!と1.5キロ分の生地を土あげました。
これをビニール袋の中で寝かせている間に次の生地を打ちます。
やってみると作戦は大成功!
生地を打つところまでは・・・
問題はその後の「のし」の工程。
最初の生地1.5キロは予想通り板からはみ出して、のし棒からも左右に大きくはみ出してしまうほど大きくなってしまい、さらに、このそば粉が比較的粘りの強いものなので、正規に使うヒノキなどののし板やのし棒でなく、ホームセンターで買ってきたシナ合板に手摺り用のラワン材の丸棒をのし棒代わりにしている私のニセモノ道具には、木の目が粗いためかやたらと生地がくっついて手に負えない始末。
これは小さい方の生地・大きい方は板からはみ出して
これを何とかなだめつつ、すかしつつ適当なところまで伸ばしてなんとか麺にいたしました。
全行程終わってみれば、あら、もう11時過ぎ。
目の前に広げられたおよそ2キロ強の蕎麦をみて達成感を味わうのでありました。
そして昼食。
久しぶりに集まった子供達全員に両親、さらには二月に生まれた孫まで入れての大所帯。
そばを茹でるにも大きな鍋がないので、でかい順に二つの鍋にお湯を沸かして、適量茹でて、吸収された分のお湯をもう一つのお鍋から継ぎ足すという手順で、何度かに渡り茹でました。
当然のごとく、お蕎麦は茹でたてが美味しいので、皆さんは茹で上がったお蕎麦を美味しそうにズルズルと大きな音を食べているのですが、それを聞きつつ私は次のお蕎麦を茹でなければならない。
でも、そんなことやってらんねえ!
ていうようなことで、お行儀は悪いのは承知で、そばの茹で加減を見つつ立ったままお蕎麦をいただきました。
自分で食べてみないと茹で加減もわからないので、これが実は大事なところ。
打ちたての生蕎麦は一煮立ちで火が通ってしまうので、結構一瞬のためらいが麺のコシを無くしてしまったりするなかなか繊細な作業なのであります。
こうしてやっっているうちに、だんだん茹で加減もいい感じになり、ベストだな!と思ったあたりで最後のお蕎麦は終了。
食べてる一同は涼しい顔をしていたようですが、私一人汗だくになって立ち食い蕎麦を食べていたのでありました。
いやあ、真夏の真昼間の蕎麦打ちというのもいいかもしれません。
来年までやる事はないと思いますが。
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